PS VR2ゲーム「Horizon Call of the Mountain」体験版レビュー VRで体験するHorizonは、正直美しく、楽しかった【動画あり】

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ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が2月22日に発売するPlayStation 5向けVRシステム「PlayStation VR2」。30本以上のローンチタイトルも発表し、26日には一般予約もスタートして、リリースまで1ヵ月を切ってより注目が集まってきている。

このタイミングでローンチタイトルのひとつで、同梱版のパッケージも用意している「Horizon Call of the Mountain」の体験版を先行試遊できた。結論から言えば、

Horizonの世界に入り込める体験自体がファンなら感涙モノ
原作を知らない人も、狩りやクライミングなど体で直感的にわかる楽しさが満載

という2点で、ぜひ遊んでほしいVRタイトルだった。とてもよかったので原稿もわりと長くなってしまったのだが、余すことなくその魅力をお伝えしていこう。


2000万本売れた超人気タイトル

本作は、日本では2017年3月にリリースされたPS4向けオープンワールドアクションRPG「Horizon Zero Dawn」と世界観を同じにするゲームだ。

舞台は、謎の厄災によって文明が崩壊してから千年後。美しく広がる自然の世界を闊歩するのは、数を減らした人類ではなく、獣のような形の機械たちだった。いくつかの部族に分かれて暮らす人類は高度な技術は失っており、狩猟や農耕で暮らし、信仰に重きをおく生活を送っている。そんな中、異端者と呼ばれる主人公の女戦士・アーロイは自らの出自を求めて旅立ち、太古の秘密を知ることになる。

……というのがZero Dawnのストーリーだ。SFやポストアポカリプスもの好きにとっては、自然の中に機械の獣が暮らしている状況だけで色々と妄想できてテンションが上がるはず。実際に遊んでみて、グラフィックが「実写か!」というほどに素晴らしく、例えば、木漏れ日の柔らかな感じや冷たさも伝わってくる雨や雪などに魅了された方も多いはず。この美麗なグラフィックを写真として残せるフォトモードも用意していて、オープンワールドを駆け回り、特殊なシチュエーションでの自撮りにハマってしまったという人も多いはずだ。

ほかにも人間関係も含めて引き込まれるストーリー、隠れたり走ったり、相手の攻撃をうまくかわしたりして機械獣を狩れたときの楽しさなどが多くの人に評価され、PC版も合わせて2021年11月時点で2000万本も売り上げたというビックタイトルになる。

さらに2022年の2月には追加コンテンツ「Horizon Forbidden West」をリリース。今回、新作としてPS VR2用の「Horizon Call of the Mountain」が登場するというのがここまでの流れになる。ちなみにVRの主人公は、アーロイではなく、元シャドウ・カージャの戦士、レイアスだ。


見上げて実感、トールネックってデケー!!!

今回の体験版は、過去に開催されたPS VR2の試遊会で遊べたものと同じで、

・世界を体験するVRムービー
・クライミングなどの探索
・機械獣との戦闘

という主に3パートを体験できた。

まずはVRムービーのパートについて。Horizonシリーズのファンなら、「あの美しい世界を実際に見てみたい」と感じたことがある人も多いはず。その願いを難しい操作なしにかなえてくれる点が素晴らしい。

ムービーといっても、テレビやディスプレイ、スマホで遊ぶ平面のゲームとは異なり、360度すべてがHorizonの世界に包まれている状況だ。視点はコントローラーのスティックで動かすのではなく、頭を振って直感的に見たい方向を見ればOK。両手のコントローラーを目の前に出せば、そこにバーチャルの手が浮いていて、実際に手を握ればバーチャルの手も握られる。誰かの視点やカメラの映像を一方的に見せられるのではない、自分の目と耳と手で体験できるムービーパートだ。

ぜひ体験してほしいのが、キリンのような姿の機械獣・トールネックが横切るシーンだ。プレイヤーは、仲間が手漕している小舟に乗ってジャングルの川を進んでいる。そして「川を覆うツタから漏れる柔らかな光が綺麗だなー」「手を伸ばすと川の水に触れるんだ」などとはしゃいでいると、シカ型のグレイザーなどの機械獣が出現。さらに突然左側から巨大な足が現れて、見上げるとはるか上方にトールネックの平たい頭がある。このスケール感、大きいものから感じる理屈ではない怖さを実感できるのが、VRのいいところだ。

PANORAは2014年からVRのニュースをお届けし、VRの体験会なども継続的に行なってきたが、2023年の今になってもVRゴーグルをかぶったことがない人がまだまだ多いと実感している。そしてVRコンテンツ自体も10年近く研究されてきてるわけで、360度CGの世界を見ているだけの単純なものより、銃を撃ったり、剣で切りつけたりと、コントローラーの操作で楽しむ複雑なものが目立ってきた。

一方で、VRの未経験者にとって、ゴーグルで手元が見えない状態で、いきなりコントローラーを渡されて操作するのは案外難しい。Horizonについてはコアなファンでも、VRは一度もかぶったことがないという方もいるはず。この面倒な操作は一切なしで、まずは座ってるだけでもVRの面白さがわかる導入を用意してくれているというのは、かなりわかっていてポイントが高い。


自然の厳しさと美しさを体感できる崖のぼり

お次は、クライミングなどの探索だ。特に断崖絶壁を素手で登り、遥か下の谷間を望む……というのは、一般人がリアルでは絶対に到達できないVRならではのスリル満点な体験だと感じた。

体験版の流れとしては、ムービーパートの終わりに先ほどの小舟がワニ型の機械獣・スナップモウに転覆されてしまう。なんとか水中を泳いで桟橋のハシゴまで辿り着いて地上に上がり、そこから崖を登って山頂の小屋を目指すという感じだ。

探索パートでは操作が必要になるが、そう複雑ではない。本作での移動は、左の「□」と右の「×」ボタンを両方押しながら前後にコントローラーを振ることで前進する。要するに歩きながら振っている手の状態の再現なのだが、大ぶりしなくてもボタンを押しながら犬かきするようにコントローラーを前後に振ることでも前進可能だ。ちなみにPS Blogによればこの移動方法はVR酔いを防ぐためのもので、酔いにくい人はアナログスティックでの移動にも変更できる。

方向転換は、アナログスティックを左右に倒せばOK。崖の出っ張りや置いてあるアイテムを掴む場合は、人差し指部分のR2/L2ボタン(トリガーボタン)を引く。掴んでいる状態を保持するのはR1/L1ボタン(グリップボタン)だ。

アナログスティックの内側に、左手は「△」と「□」が、右手は「○」と「×」のボタンがそれぞれ配置されている
上の人差し指が当たる部分が「L2」か「R2」、中指が「L1」か「R1」のボタンになる

クライミングについては、頭を動かして岩場の出っ張りや植物などを探し、自分の手を伸ばしてトリガーで掴んで腕で引き寄せて、その場所に移るという操作の繰り返しになる。前作や前前作では、PS4/PS5のコントローラーの「×」ボタンで崖に飛びつき、左スティックで視点を変えてさらに「×」で飛び移るといった操作だったが、それよりも直感的という印象を受けた。

片手で崖をホールドしながらもう片方の手で次のポイントを探り、握れたら元の手を離して、また次を探す。一見、単純でつまらなそうに感じるが、自分の体を動かして、試行錯誤→できた!という達成感が繰り返されるのがとても気分がいい。頂上にたどり着いたときの安心感は格別だ。繰り返しになるが、断崖絶壁から臨んだ世界も「顧客が本当に必要だったもの」な美しい光景で心を奪われた(そして高所の怖さについてPS VRの発売前にデモであった映画「ザ・ウォーク」の綱渡りを思い出した)。


サンダージョーの巨体が放つ連続攻撃に絶望

機械獣との戦闘パートはかなり操作が忙しい感じになるが、その分、倒せたときの爽快感はめちゃくちゃ大きい。

Horizonの武器といえば、やっぱり弓。戦闘前には、まず山頂の小屋近くにある弓を拾って、戦い方を覚えることになる。操作は、実際の弓を引くのに近い。具体的には、

  1. 弓の近くに手を伸ばし、利き手とは逆の手のコントローラーでトリガーを引いてピックアップ
  2. 利き手を肩の裏に回してトリガーを引いて矢を取る
  3. 構えた弓につがえて後ろに引いて狙い、トリガーを離して打つ

という流れだ。弓は、持ち手を変えることもできるし、持ってる手を肩に回してトリガーを離せば背中に収納可能だ。山頂の小屋の周囲にはいくつか的が用意してあるので、それを使ってトレーニングしておくといい。

この矢を打つこと自体もとても楽しい。現実でダーツで遊ぶ感覚に近いだろうか? 自分の目と手で狙いをつけて、見事的に当たったときの爽快感はやっぱり格別だ。弦の部分を引いたり、矢を放った際にはコントローラーが振動して衝撃が来るので、とてもリアルに感じる。なお体験版では、過去作のように素材から矢をつくる必要はなく、無限に打つことができた。


実戦は、まず小型の二足歩行恐竜に似ているウォッチャーから始まった。

体験版の戦闘は、過去作でよくある周囲をスキャンして索敵し、遠くからだったり、草むらに隠れて近づいて、急所を一撃必殺で狙う……というものではなく、めちゃくちゃ敵に見つかってる状態からスタートする。

戦闘パートに入ると、プレイヤーは敵を中心にして右か左にしか移動できなくなる。ウォッチャーはしっぽでの体当たりや、目からのエネルギー弾で攻撃してくるので、「×」ボタンを押しながらコントローラーを移動したい方向と反対に振って移動して避けよう。VRなので自分の体を左右に大きく動かして避けるというのもアリだ。

その合間を見て矢をつがえて当てていくわけだが、最初は戦闘自体に慣れていない&慌てすぎて、まぁ当たらない(笑)。冷静に考えてみれば、過去作と同じならウォッチャーは目が弱点になるわけだが、本気で暴れている敵を目の前にしてみるとそんなことを考えている余裕もなくなり、狙いやすいウォッチャーの体に向けてひたすら連射するという感じになってしまった。敵には体力ゲージがあり、これを0にすれば見事討伐完了というわけだ。

さらにティラノサウルスのような機械獣・サンダージョーとの戦闘が待ち受けている。

このサンダージョーのデカさがとにかくヤバい(語彙力)。サファリパークのようなオリのない状態でゾウに出くわした感覚と近いだろうか? 過去作のテレビやPCモニター見たときも十分に大きさを感じたが、VRで目の前にしたときの圧迫感たるや、「デ、デケー!!!」と思わず声に出してしまうこと請け合いだ。

その巨体が敵意剥き出してこちらを見つめ、体当たりしたり、機関銃やレーザーを乱射してくるわけで、それはもうウォッチャー戦どころではないほど慌ててしまった。過去作のように遠くや高いところに逃げながら弱点をチュンチュン狙う……なんて生ぬるいことは許してくれず、激しい攻撃をひたすらかわし、その合間に弓で攻撃するという正攻法(?)で臨まなければならない。

……のだが、サンダージョーがとにかく硬い! 筆者のエイムがあまりよくないこともあり、移動しながらではきちんと狙えず、弱点にも当てられずに全然体力ゲージが減ってくれない。そしてダメージが入ったからといって、サンダージョーは全然攻撃の手を緩める気配がない。絶望の中、それでも一矢報いようと戦い続けたのだが、あえなく自分のライフがゼロに。サンダージョーに踏まれてゲームオーバーになる中、「あんなに動いてても的に当てる流鏑馬ってすごいね……」と謎のリスペクトを抱いてしまった。

プレイの途中で教えてもらったのだが、フィールドにはたまに壁などの障害物があって、その裏側に隠れることで攻撃をしのげる。だが壁は攻撃によって壊れてしまうので、ずっとそこに隠れていることはできない。またフィールドを見返すと櫓の上に固定式の弓があることがわかり、こちらはより大きなダメージを与えてくれそうだ。ひょっとしてサンダージョーの背中にあるディスクランチャーも、破壊できれば過去作のように武器として使える? 1度の試遊だけでも「次はこれを試したい」の妄想が膨らみ、早く本編をプレーしたい!という思いが強まった。


2023年、最初のVRゲームとして遊んでほしい1本

「Horizon Call of the Mountain」は、体験版を遊ぶ限り、VRゲームの美味しいところをいいとこどりしてきたタイトルだと感じた。

例えば、崖登りは、Meta Quest向けにロッククライミング「The Climb」が2作リリースされているように、VRゲームで「これをやると楽しい」という定番のジャンルのひとつになっている。そもそも現実でロッククライミングして絶景を眺めるためには、まず体を鍛えることが必須だ。その努力をVRですっ飛ばせて、安全に登れて絶景を味わえるわけだ。

弓に関しても、SteamVRの最初期である2016年から用意している「The Lab」をはじめ、いくつかタイトルがリリースされている。これも現実で弓と矢を用意し、的を自分で置いて……というめちゃくちゃ面倒くさい用意をせずに、矢を打つ楽しさを体験できる。まさに「できないことが、できるって、最高だ。」を体現しているわけだ。

ゲームの構成としても、何もしなくてもVRの楽しさがわかるムービー → コントローラーをちょっと使う崖登り → 体とコントローラーを激しく使い練習することで上達が感じられる戦闘と、VRに慣れていない人でもうまくステップアップしていけるように体験デザインされている。めちゃくちゃ秀逸だ。

冒頭で伝えた結論のように、原作ゲームのファンなら間違いなく感動する、そうでなくても「VRゲームって面白いなー」と可能性を感じてくれる一本に仕上がっていると感じた。

VRはかぶるまでのハードルが高く、最初に体験したコンテンツが微妙だと「なんだこんなものか」と判断して以後、興味をなくされてしまいがちだ。「Horizon Call of the Mountain」はそうではなく、初めてのVRゲームとして「VRってやっぱすげーな!」と感動を与えてくれるタイトルに仕上がっている。ぜひPS5をゲットできた方は、PS VR2と本作も入手して新しいゲーム体験の価値を実感してほしい。

(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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Horizon Call of the Mountain
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