「PICO 4」ハードウェアレビュー 大体つながるUSB-C、使えるカラーパススルーなど4万円台が信じられない完成度

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128GBのストレージを持つモデルの価格が4万9000円。Quest2の価格が5万9400円の現在、戦略的プライスといってもいいスタンドアローンVRヘッドセットの「PICO 4」。メディア用にお借りした機体を使ってみて、ファーストインプレッションに続き、さらに深掘りをしてみましょうか。


おさらいとして、ファーストインプレッションのポイントをまとめました。

・ストラップ込みの重量(実測)
PICO 4:585g
Quest 2:504g(Eliteストラップ装着時は626g)

・パススルー
PICO 4:カラー
Quest 2:モノクロ

・IPDの設定
PICO 4:62〜72mmの間で0.5mm刻みでセット。モーター駆動
Quest 2:58mm、63mm、68mmの3段階。手動セット

・コントローラの重量(片側、実測)
PICO 4:178g(乾電池2本)
Quest 2:152g(乾電池1本)


Quest 2の三段階IPD設定ではスイートスポットが狭すぎて辛い。そう感じていた強乱視な筆者にとって、PICO 4はこの時点で買いのVRヘッドセットとなりました。


PICO 4本体の使い勝手をチェック

バッテリーをストラップ後部に内蔵したことで、重量バランスに優れているPICO 4。ストラップのベルトを軽く締め付けただけでしっかりとフィットします。圧迫感を控えめにしても大丈夫。 前モデルとなる「PICO Neo 3 Link」もアクションゲームに適した作りでしたが、 PICO 4もVRアクションゲームを気持ちよく楽しめそう。

フェイスカバーの横幅はQuest 2のものよりやや狭い。しかし開口部が広く、奥行きがあることから、メガネをつけたままでの装着も楽です。 Quest 2ではひっかかってしまうJINS MEMEのウェリントンフレームでも難なく収まります。

Quest 2やHTC VIVE Pro2、Valve Indexで使用できるVR専用メガネVRsatileも無改造で使用可能とのことです。またJINSでレンズアタッチメントが提供される予定のため、眼鏡派も安心できます。

筆者が確認した限り、ストラップ/本体バッテリーは取り外すことができませんでした。これは筆者の勘違いであってほしいのですが、ストラップが外せないのにストラップなしの重量が295gと発表した(記事執筆時点で公式サイトのスペックリストから重量情報は削除されている)その意図はなんだったのか、理解に苦しむところがあります。

左右のストラップは樹脂製。このストラップがあるため後部のパッドの位置がバッチリと決まります。立ちながら、または座りながら使う分には長く使えそうだと考えられますが、想定外の角度から負荷がかかるVR睡眠用として使うにはオススメできない、という印象がありますね。


USB Type-Cを用いた音のインプット/アウトプット

近年のスマートフォンのムーブメントに合わせたのでしょうか。ポートはUSB Type-Cのみ。イヤホン端子はありません。コストダウンにかける意気込みを感じます。

しかしUSB Type-C接続のイヤホンマイクは使用可能です(テストで使ったのはコチラ)。Quest 2はイヤホン端子/USB Type-C端子共に外部マイクを扱うことができなかったのですが、PICO 4はイケる。良質な音をVRのなかに持ち込みたい一部のユーザー向けのアドバンテージとなります。

Android対応のUSBオーディオインターフェースも使用可能です。スタンドアローンってなんだっけ、という状態にはなりますが、楽器の音もVR空間内に持ち込めます。

同じくAndroid対応ゲーミングアンプも使用できました。

据え置き用の機材は使いたくないという方は、DACチップを内蔵している・通話可能と宣伝している超小型・ケーブルタイプのDACを用いましょう。USB端子からアナログの音声信号を取り出す普通のUSB Type-C オーディオ変換アダプタ/ケーブルは使えなかったので要注意。

エレコムのMPA-C35PDBKなどは、充電しながらイヤホンマイクやヘッドセットを使用できました。またマイクだけとなりますが、ゼンハイザー XS LAV USB-CというUSB Type-C接続のラベリア(ピン)マイクも使用できましたよ。

Bluetoothイヤホンと接続すると、音は聞こえる。けどこちらの声はPICO 4の内蔵マイクで拾っているようでしたね。

もう一点ご報告を。筆者手持ちのUSB Type-Cハブを経由させるといままで紹介してきたDACやアンプ類が認識しませんでした。


内蔵スピーカーの音質はシャリ感あり

内蔵スピーカーにも触れましょう。最大ボリューム時の音は、Quest 2よりも大きい。迫力あります。ただし高域が目立ちます。構造上低音が耳まで届きにくいのは仕方ないとして、ハッキリクッキリとした音となるようにカリカリでハイ上がりなチューニングとなっているようですね。

声を聴くには良いでしょう。ただし音楽を聴くとなると、不満を覚える方も多そう。


ゲインが高く音割れした内蔵マイク

ところでマイクの品質はどうでしょうか。PICO 4、Quest 2共にリリースされている、Rec Roomで試してみました。順番はQuest 2の内蔵マイク、PICO 4の内蔵マイク、 外部DAC+ゲーミングヘッドセットで録音してみました。

再生時はスピーカーのボリュームをしぼってくださいね!

というのもPICO 4はマイクの音が大きい。ささやき声でも拾うほどゲインが高いのです。だからアプリ側でゲインの調整ができないRec Roomだと音が割れてしまいました。ご参考までに。


Quest 2より広いが端が歪む視野

PICO 4の視野角は対角105度。対してQuest 2は公式情報が公開されていません。メガネをつけた状態でのテスト、しかも主観となりますが、PC版VRChatで同じ場所から見た時の視野は、PICO 4のほうがわずかに広いと感じるものでした。

しかし実際に目で感じる視野は、左右が丸いカーブを描いたもの。視野の端は広角レンズで見たときの映像のように、樽型の歪みを感じました。

Rec RoomやPC VRのRez Infiniteでも確認しましたが、傾向が同じ。Quest 2は四角い水中ゴーグルをのぞいているような見え方ですが、PICO 4は双眼鏡のように思えましたね。PICO 4は大手量販店でも販売するようなので、気になる方は店頭でのチェックをオススメします。

画質はQuest 2と比較して勝っている…とは感じなかったなあ。片目あたりの解像度は2160 ×2160ピクセル。Quest 2の1832×1920ピクセルより高画素ですが、わずかに広くなった視野で使われているという印象でした。明るさに関しても同等ですね。


カラーパススルーのクオリティは想像を遥かに超えていた

パススルーは極めて良好です。一眼カメラで立体的な映像を見せるため、頭を素早く降ると、近くにあるモノの形が歪みます。また裸眼でみたときよりも距離が近くに感じます。

それでも、明るい室内ならPCモニターの文字を読めるほどの解像度があり、暗い場所でも裸眼のときと同じように歩くことができる性能はお見事。


ところで本体のファンノイズはどうだろうか?

本体レビュー編、最後のポイントとして、ファンノイズに触れましょう。PICO 4にはSnapdragon XR2というSoCを冷却するためのファンが備わっています。いくつかのアプリを使いながらPICO 4を外してファンノイズを確認してみましたが、個人的には許容範囲の音量。しかし主観によるものなので、あくまで参考にとどめておいてください。高負荷なアプリを使い続けたときは、また異なるかもしれませんし。


コントローラを含めた使い勝手はソーシャルVR体験編でどうぞ

さて、ここまではPICO 4の本体まわりの機能、性能、クオリティをチェックしてきました。コントローラに関しては、Windows PCと接続してPC版VR Chatで試してみました。次作のレポートで触れていきますので、お楽しみに。

しかし5万円を切るスタンドアローン型VRヘッドセットに、状況を問わずに使えるカラーパススルー機能を搭載するとは、ちょっと感動しました。 友人ともTwitterで話をしていたのですが、PICO 4用のAR/MRアプリが楽しみです。気になる点はマイクまわりだけですし(それもファームウェア/OSのアップデートで対応できそう)、安価なVRヘッドセットが欲しい方にはオススメできる1台です。

(TEXT by 武者良太

 
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