ホロライブ3度目の全体ライブ「Link Your Wish」 DAY1厳選レポート

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約2年前の2020年1月24日(金)、アイドルVTuberグループ「ホロライブ」が超満員の豊洲PITで、その後の大躍進に向けての狼煙を上げた初めての全体ライブ「hololive 1st fes.『ノンストップ・ストーリー』」。

2021年12月21日(月)と12月22日(火)、新型コロナウィルス感染拡大の影響で無観客の配信限定ライブでの開催にはなったが、ホロライブ4期生という新たなメンバーも加わり2DAYS公演へとスケールアップした2度目の全体ライブ「hololive 2nd fes. Beyond the Stage Supported By Bushiroad」。

そして、海外組のホロライブインドネシア、ホロライブEnglishも初出演し、世界のホロライブファンが待ち焦がれた3度目の全体ライブ「hololive 3rd fes. Link Your Wish Supported By ヴァイスシュヴァルツ」が3月19日(土)・20日(日)に幕張メッセで開催された。大声の禁止をはじめ、さまざまな感染予防対策を徹底した上で、有観客での実施だ。

本稿では、19人のホロライブのアイドルが全28曲を披露した約2時間50分の「DAY1」公演を現地取材した筆者が、主観のみで厳選したパフォーマンスをレポートしていく。全セットリストに関しては記事の最後に掲載している。未見でライブの全貌が気になった人は、ニコニコ生放送とSPWNで期間限定配信されているアーカイブの視聴をお勧めしたい。

JPメンバー15人の『Shiny Smily Story』で開演!

3ヵ月前にデビューしたばかりのホロライブ6期生「秘密結社holoX」のラプラス・ダークネスさん、鷹嶺ルイさん、博衣こよりさんによる「DAY1スタート!」という影ナレで開演した「DAY1」。会場前方にあるスクリーンでオープニング映像が始まり、出演者の名前とビジュアルが順番に映し出されていく。

AZKiさん、さくらみこさん、星街すいせいさん、赤井はあとさん、白上フブキさん、夏色まつりさん、大空スバルさん、戌神ころねさん、白銀ノエルさん、宝鐘マリンさん、天音かなたさん、常闇トワさん、姫森ルーナさん、桃鈴ねねさん、尾丸ポルカさん、一伊那尓栖さん、がうる・ぐらさん、ワトソン・アメリアさん、ムーナ・ホシノヴァさん。ホロライブ5期生の桃鈴ねねさん以降の6人がホロライブの全体ライブ初出演のメンバーだ。客席からは大きな手拍子が自然発生。大声で推しの名前を叫びたい気持ちをグッと我慢して、想いを手のひらに込めているようだった。

Photo by 中村ユタカ(@yutamacaron)

ライブのタイトルロゴを映してオープニングが終わると、センターのスクリーンが2階建てのステージに変わり、日本のホロライブメンバー(ホロライブJP)の15人がお揃いのアイドル衣装で登場。上段には、左からポルカさん、かなたさん、スバルさん、はあとさん、ルーナさん、ノエルさん、ねねさん。下段には、左からまつりさん、みこさん、マリンさん、すいせいさん、フブキさん、AZKiさん、ころねさん、トワさんが並び、1曲目の「SSS」こと「Shiny Smily Story」を歌い始める。

Photo by 中村ユタカ(@yutamacaron)

「Shiny Smily Story」は、1st fes「ノンストップ・ストーリー」の開催前に発表されたホロライブ初の全体曲で、まさに「とまらないホロライブ」状態となった、その後の大躍進を象徴する曲。筆者を含む鍛えられたホロライブファンの多くは、涙腺のバルブと強固に関連づけられている名曲で、客席はルールを厳守し静かだったものの、筆者の耳には「いきなり『SSS』!」という感動の声が聞こえた気がした。

デザインの方向性は統一しながら、個々のイメージカラーやモチーフも取り入れて一人ひとり個性的でもあるホロライブのアイドル衣装。ステージに並ぶ15人のパフォーマンスも、アイドル衣装と同様、基本的には同じ振り付けで踊りながらも、手振りを中心に細かな動きに個性があふれている。

ころさんが驚愕のハンドスプリングを披露!

「SSS」の後は、ユニット&ソロのコーナーがスタート。次々と披露されるアイドルたちの歌やパフォーマンスが魅力的なことは当然だが、このライブでの初の試みとして事前に発表されていた3つの挑戦のひとつ、「全編通してのAR演出」も存分に魅力を発揮。

前方に3枚並ぶスクリーンのうち一番大きな中央の1枚は、アイドルたちのパフォーマンスを真正面からの固定画角で映し、ライブのステージとして機能。左右のスクリーンでは、バーチャル空間の中を自由に動けるカメラからの映像と、会場の後方から客席を含めた広範囲を捉えられるカメラの映像がタイミングよく切り替わる。そして、バーチャル空間内のカメラがステージ上のアイドルを横や斜め後方から捉えるとき、ステージ前の演出装置や前方の客席などもアイドルと一緒の映像に映される。このAR演出によって、バーチャルアイドルたち幕張メッセの客席にいる自分たちと同じ空間に存在する感覚を、より深く感じることができた。

Photo by 中村ユタカ(@yutamacaron)

また、中央のスクリーンでステージ全景を映し、左右のスクリーンの映像が次々に変わるこの方式は、会場で観ることの魅力を上乗せしている。ステージに立つ演者の姿を直接見ながら、左右のスクリーンでアップなどの違うアングルの映像を楽しむというリアルの肉体を持ったアーティストのライブを観るときと同じ感覚で楽しめた。

オリジナル曲が4曲続いた後の5曲目、ホロライブゲーマーズのころねさんが歌ったのは、このライブ最初のカバー曲、2007年に発表されニコニコ動画などで人気を博した「エアーマンが倒せない」。アイドルのフェスで「エアーマン」のカバーはまさかの選曲のはずだが、1st fesでは「こちら、幸福安心委員会です。」、2nd fesでは「ハロハロナリヤンス音頭」と、毎回ソロコーナーの選曲が個性的なころねさんだけに、「さすが、ころさん」と納得してしまう。レトロゲームの実況配信も多いだけに、アクションゲーム「ロックマン2 Dr.ワイリーの謎」の様々な敵に負け続けるプレイヤーの心情を描いた歌詞との親和性も妙に高い。実際、ころねさん自身も「ロックマン2」の実況配信でエアーマン相手に苦戦した経験がある。

また、毎回、選曲だけでなくパフォーマンスのクオリティーでも驚かせるのがころねさん。今回も愛らしい歌声や、長年のボクシングジム通いで鍛えられた身体能力の高さを感じさせるキレキレで軸のブレのないダンスに加え、間奏では、つま先が頭の高さまで上がるハイキックや、お手本のように綺麗なハンドスプリング(前方倒立回転跳び)を披露。静かな会場の空気を何度もざわつかせた。

また、AR演出と同じく事前に発表されていたこのライブの挑戦のひとつが「生バンドでの演奏」なのだが、この令和の時代に迫力抜群の生バンドによる「エアーマンが倒せない」のステージを観られたことには、ホロライブの3rd fesであることとは別次元の感動も感じた。もちろん、ライブ全編を通して、生バンドによる演奏は大きな魅力となっていた。

サメちゃんら海外勢が3Dの姿を初披露!

その後も、フブキさんの「Say!ファンファーレ!」や、ねねさんの「ねねねねねねねね!大爆走」などファンが楽しみにしていたオリジナルソロ曲と、はあとさん&ポルカさんの「脱法ロック」など人気のカバー曲が歌っていった中、客席の誰も聴いたことの無い最新曲を初披露したのが13曲目に登場したマリンさん。このライブのエンディングでは、出演者やスタッフの名前とともに、セットリストと楽曲制作者も公開されたのだが、そこで明かされた曲名は「マリン出航!!」。作編曲の担当者の名前は「?」となっており、マリンさんがライブ翌日に行った感想配信によると、マリンさん史上最高額の制作費を投入したオリジナルMVも制作中とのこと。曲の詳細はMVで発表になるようだが、イントロやサビの壮大で重厚な曲調から想像されるのは、某レジェンド作曲家の名前。恐らく数年前のマリンさんは想像もしてなかったような夢が、実現した可能性を予感させる。

15曲目から18曲目までは、4人連続でホロライブ海外勢のパート。このライブでの3つ目の挑戦「海外タレントのライブ参加」だ。一般的にバーチャルアーティストのライブ出演に欠かせないのが自由に動ける3Dの身体。しかし、この3rd fes開幕の時点では、ホロライブの海外勢でリアル頭身の3Dの身体を持っているアイドルは一人もおらず、どのような形でステージに登場するのかは注目ポイントのひとつだった。サプライズでの3D初披露を期待しつつも、1月28日(木)に開催された「湊あくあ ワンマンライブ2022『あくあ色 in わんだ~☆らんど♪』」にゲストとして出演したホロライブEnglishのぐらさんと伊那尓栖さんは、3DではなくLive2Dの身体のままで登場しただけに、「あの手もあるか……」などと考えてもいた。

しかし、海外勢のトップバッターとして登場した「サメちゃん」ことぐらさんは、イメージどおりにかわいらしい3Dの身体で登場。「みんな、どうも。サメですー」とあいさつすると、小さな身体で大きく踊りながらオリジナル曲の「REFLECT」を披露。ファンなら誰もが知っている歌唱力の高さだけでなく、足を軽く後ろに跳ね上げる動きなどがかわいすぎるダンスで「動きまでかわいい」という新たな魅力を存分に見せつけた。デビュー配信の冒頭、「a」のひと言だけで国内外のVTuberファンの心を鷲づかみにしたサメちゃんが、こんなにもかわいく動く3Dの身体まで手に入れたら、どれだけの人がその魅力の餌食になるのだろうか。当然、続くアメリアさん、一伊那尓栖さん、ムーナさんも3Dの身体で登場し、個性豊かなステージを披露。今後のホロライブ全体のさらなる展開もますます楽しみになる海外組パートだった。

すいちゃんの歌声が幕張メッセの空気を一変!

その後も、オリジナル曲とカバー曲を織りまぜた魅力的なパフォーマンスが続いていき、24曲目の「ぷ・れ・あ・で・す!」では、スバルさんがキレキレのダンスと元気いっぱいの歌声を披露。25曲目の「HiHiハイテンション!」でも、ライブのステージ上では本当に「清楚担当」でアイドル力も抜群の夏色まつりさんが、まさに夏色な光を感じさせる明るくかわいいパフォーマンスで会場をさらに盛り上げていく。

そして、26曲目に登場したのが、昨年9月に発売した1stアルバムが各種ヒットチャートの上位を飾り、10月には1stソロライブも大成功させたすいせいさん。VTuber界でも指折りの本格派シンガーが、アカペラで始まるアルバム表題曲「Stellar Stellar」を歌い始めると、会場の空気が一変。直前までに高まったテンションはそのままに、真剣に歌声に聴き入るような雰囲気になっていく。

企業に属さない個人勢としてVTuber活動を始め、2019年5月にホロライブの運営会社であるカバーの音楽レーベル「イノナカミュージック」に加入。その後、1st fes開催の2ヵ月前となる2019年12月1日にホロライブへと転籍したすいせいさん。良いカメラの姿(3Dモデル)初披露の場でもあった1st fesの会場では、すいせいさんの歌唱力をまだ知らなかった様子の一部の観客から驚いたような声も聞こえてきた。しかし、幕張メッセの客席を埋めた観客のほぼ全員は、ホロライブ大躍進の立役者の一人である「すいちゃん」の歌声の魅力を当然知っていたはず。しかし、記者席から見下ろせる客席のファンからは、何かに驚いているような空気も感じた。きっと、ライブ会場で聴くすいせいさんの歌声は、配信や音源で聴く歌声をさらに上回る魅力を放っていたのだろう。

「Stellar Stellar」を歌い終えて退場したすいせいさんは、こちらも歌唱力の高さに定評のあるトワ様と二人で再登場。すいせいさんのオリジナル曲「GHOST」のイントロが流れると、再び会場全体から驚いたような空気が伝わってくる。筆者もすいせいさんとトワ様のデュエットに期待はしていたが、その曲が「GHOST」とはまったくの想像外。そして、ホロライブを代表する二人のボーカリストのクールでパワフルな歌声は、「DAY1」のクライマックスにふさわしい熱を放っていく。その後のMCでは、トワ様とデュエットをすることになったすいせいさんが歌唱曲として「GHOST」を提案した理由を説明。元から「GHOST」が大好きで歌えるのがうれしかったというトワ様だが、すいせいさんが提案した理由までは聞いてなかった様子。いかにもすいせいさんらしいその理由を聞き、少しショックを受けていたのがかわいかった。

「DAY1」の最後を締めくくったのは、3月12日に発表されたばかりでライブ初披露となる最新のホロライブ全体曲「Prism Melody」。1曲目の「SSS」と同じくホロライブJPの15人がステージに立ち、これから先も新しい未来へファンを導いていくという決意と自信を感じさせる楽曲を歌い上げる。この曲では全員が実際に物販で発売されていたライブTシャツに着替えて登場。ライブでは定番の演出だが、新衣装の制作にコストがかかるバーチャルアーティストのライブでは珍しい演出だ。ちなみに、ライブ後の各メンバーの感想配信によると、Tシャツは白と黒の2種類から好きな色を選べたそう。「SSS」のときとはメンバーの並び順が異なっており、この変更にはどんな意味があるのだろうと考えていたのだが、恐らくTシャツの色の違いが並んだとき綺麗に見えるように変更したのだろう。

Photo by 中村ユタカ(@yutamacaron)

華やかなアイドルライブらしいパフォーマンスで締めくくられた3rd fesの「DAY1」。最先端のXR技術を駆使してスクリーンの中で行われている演出に、照明やスモークなどを使ったリアル会場の演出と、生バンド演奏も組み合わさり、この日のために磨き上げられたアイドルたちの歌とダンスをさらに輝かせる。有観客ライブの魅力も改めて実感できるとともに、このクオリティーで、出演者も内容も異なるライブがもう1日観られることが、さらに楽しみになるようなステージだった。

<DAY1 セットリスト>
M1 Shiny Smily Story/DAY1ホロライブJPメンバー全員
M2 Happiness World/白上フブキ、宝鐘マリン
M3 特者生存ワンダラダー!!/天音かなた
M4 HOLOGRAM CIRCUS/尾丸ポルカ
M5 エアーマンが倒せない/戌神ころね
M6 Candy-Go-Round/夏色まつり、大空スバル、桃鈴ねね
M7 Say!ファンファーレ!/白上フブキ
M8 画面の中の君が好き/AZKi
M9 ねねねねねねねね!大爆走/桃鈴ねね
M10 脱法ロック/赤井はあと、尾丸ポルカ
M11 絶対忠誠♡なのなのら!/姫森ルーナ
M12 花月ノ夢/さくらみこ
M13 マリン出航!/宝鐘マリン
M14 しんでしまうとはなさけない!/白銀ノエル、姫森ルーナ
M15 REFLECT/がうる・ぐら
M16 ふしぎ・プルプル・プルリン・リン! /ワトソン・アメリア
M17 VIOLET/一伊那尓栖
M18 High Tide/ムーナ・ホシノヴァ
M19 太陽系デスコ/さくらみこ、戌神ころね
M20 ほめのび/白銀ノエル
M21 infinity/赤井はあと
M22 born to be real/常闇トワ
M23 モザイクロール(Reloaded)/AZKi、天音かなた
M24 ぷ・れ・あ・で・す!/大空スバル
M25 HiHiハイテンション!/夏色まつり
M26 Stellar Stellar/星街すいせい
M27 GHOST/星街すいせい、常闇トワ
M28 Prism Melody/DAY1ホロライブJPメンバー全員

© 2016 COVER Corp.

(TEXT by Daisuke Marumoto

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