わずか4.2kg、専用シューズなしでVRを歩ける! Movereの歩行装置「Crus-TypeC-DK1」をTGSで試した

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一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は9月30日〜10月3日、「東京ゲームショウ2021 オンライン」(TGS)を開催中だ。今年は名前の通りオンラインがメインだが、幕張メッセのホール7、8もリアル会場として抑えて、プレスやインフルエンサー向けに一部の出展者がブースを構えていた(一般入場はなし)。

VR・VTuberメディアのPANORAとして、先に公開したVR会場の記事に加えて、リアル会場も取材したのでレポートしていこう。

まず感じたのは、コロナ禍でガラッと変わってしまった展示会のあり方だった。TGSといえば、例年、国際展示場のホール1〜8、別棟のホール9〜11をはじめ周囲のホテルまでミーティング会場として抑えて実施する一大イベントだ。会場内も巨大なトラスが組まれたブースが立ち並び、ステージイベントやコンパニオンなどで華やかに演出され、通路は人で溢れているというのが通常だった。

それが今年はオンラインがメインで、リアルは基本的にプレスとインフルエンサー、関係者しか訪れないということもあって、出展者が34とかなり少なく、実質ホール8のみでの展示という若干寂しい状況だった。体感では出展者より、取材する側のメディアやインフルエンサーの方が多い印象だ。

なお、ホール7は公式番組のブースなどが並んでいた

そんな限られた中でPANORAで注目したのは、広島市立大学発ベンチャー・Movereが手がけるVR用歩行装置「Crus-TypeC-DK1」だ。ユーザーが足踏みをしながら太ももをクッションに当てると、自分の足でバーチャル空間などを歩けるようにしてくれる装置で、今年9月、開発者向け評価版を9万9800円(税・送料込み、以下同)で発売した(ニュースリリース)。

VRで歩行装置というと、Virtuixの「Omni」が知られている。こちらは専用のシューズを履いて、すり足で動くことで歩けるが、Crus-TypeC-DK1は太ももに当てるタイプなので、どんな靴でも、なんなら裸足でもOKというのが気軽だ。

装置自体も4.2kgと軽量だ。標準はスタンドなしの状態で販売しており、付属のクランプで机の手前側に固定して利用する。専用スタンドは60cm(3万9800円)と70cm(4万9800円)の2つの直径が異なるタイプを用意。高さも調節可能で、一番歩きやすい太ももの場所に変更できる。

クッションに太ももを当てると内部の荷重センサーが検知する
普通にコントローラーとして認識されるので、Steamのキーバインド設定で前進のキーを割り当てることで歩けるようになる
上部から。今回は前側に前進、斜め左・右に斜め左・右というキーを割り当てている

TGS会場のデモでは、ソーシャルVRの「Cluster」で作られた歩行ゲームをVRゴーグルとPCモードの両方で体験できた。ゲームは落とし穴や障害物を交わしてゴールまで進むという内容なのだが、特にPCモードの場合は何の準備もなくいきなり歩けるという気軽さがよかった。

歩行感覚は若干コツが必要で、スタンドの高さをきちんと調節したうえで、爪先立ち気味で前に体重をかけながら歩くといいと感じた。方向に関しては、足だけでは前と左右の斜め前しか検知していないため、微調整は難しい。VRゴーグルを併用した場合、手に持ったVR用のコントローラーで方向を修正できるため、こちらの方がスムーズに操作できると感じた。

個人的に面白かったのは、少しの歩行距離にもかかわらず汗をかいたということ。ソーシャルVRではワープなどコントローラーでの移動が主となるため体への負荷は少ないが、歩行装置を使う場合、移動した分だけ普通に歩くことになるため運動になる。やはり突き詰めると「VRは筋肉」というのを再確認した。

一緒に取材をしたライター・アシュトン氏は、特別にVRChatを体験させてもらっていた。「自分の足踏みで動けるので、コントローラーよりも没入感はある。特に『Olympia』や『PANDORA』などの広いワールドマップを散策する際に、自分の足で歩けるのは魅力的だと思う。ただ試した短時間だと、歩く方向や止まる感覚、後ろに歩くなどの微調整が難しいと感じた。また、コントローラーの場合、スティックの倒し方で歩く速度を調節できるが、Crus-TypeC-DK1はゆっくり歩くために慣れが必要そう」と語っていた。

用途としては、ゲームだけでなく、職業シミュレーションを想定しているとのこと。例えば、大きな工場にて職人の技術を継承させたいという目的において、機械を止めるわけにもいかず、かといって土地の限られた日本で同じ規模の工場を作るのも難しいというケースで、VRゴーグルと併用して体験してもらうことで、体で技術を覚えてもらえるという感じだ。

すでに発売されている製品なので、VRChatなどのヘビーユーザーで、トラッカーもすべて揃っていて、バーチャルの世界にもっと没入感がほしい……という方は試してみてはいかがだろう。

(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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