VIVEトラッカー(3.0)・VIVEフェイシャルトラッカーを先行体験  VTuber・アバターの表現がより豊かに!

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HTC NIPPONは、「VIVEトラッカー(3.0)」と「VIVEフェイシャルトラッカー」を4月9日に発売する。前者は体の随所に装着して全身の動きを、後者は唇から顎までの動きを検知して顔の動きを、それぞれアバターに反映できるモーションキャプチャー機器(モーキャプ)になる。価格はともに1万7500円(税込)。

VIVEトラッカー(3.0)。真ん中のVIVEロゴが電源ボタンになっている。
VIVEフェイシャルトラッカー。

VTuberやソーシャルVRサービスなどで重要になってくるトラッカーだが、はたして新製品の使い勝手はどれくらい変わっているのか。先行体験してきたので、その魅力をまとめていこう。


「安価で全身キャプチャー」を実現してきたトラッカー

VIVEトラッカーは、2017年1月に初代が発表された製品で、今回で3世代目となる。元々、銃やバットなどの道具に取り付けて、その動きをバーチャル世界に反映させるという使い方を想定していたものの、日本ではちょうどVTuberやソーシャルVR「VRChat」が広まり始めた時期だったこともあり、アバターを動かす用途で導入するケースが急増。結果、2017年3月の発売から入荷して即、売切れという状況が続いていた(ニュース記事)。

人気の理由は、ほかの全身モーキャプに比べて安価な点。2021年の今でこそ「Haritora」や「Manus Pro Tracker」のようなハードが登場しているものの、2017年当時は文字通り桁違いに安価で、個人でも導入のハードルが低い。

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予算に応じてトラッカーの数を増やし、モーキャプの精度を上げられるという柔軟性もメリットだ。同じHTCが販売している「VIVE」シリーズと組み合わせるのが定番で、頭のVRゴーグルと両手のコントローラーの3点を基本とし、腰やお腹と両足にトラッカーを装着しての6点で全身モーキャプするケースが多い。3点では頭部と手の位置から下半身を推測するが、6点なら足と腰の位置を取得して反映できるというわけだ。さらに両肘・両膝にトラッカーを足して10点にすると、より正確な動きになる。

もちろん人体のモーキャプだけでなく、スポーツや医療のトレーニング、宇宙開発のシミュレーションといった用途で、手や足、機器をトラッキングするためにも使われている。発売から4年の間にさまざまな分野で用途が開発されてきており、日本で言えばVR ZONEやMAZARIAといったVRアミューズメント施設も採用してきた(関連記事)。

話を人体に戻すと、VIVEシリーズでは、アイトラッキングが可能な「VIVE Pro Eye」というVRゴーグルも販売している。装着者の目の動きを取得し、キャラクターやアバターに反映できるというもので、ここに新製品のVIVEフェイシャルトラッカーを追加することで、口周りも含めての再現が可能になった。

VIVE Pro Eye

2017年当時に比べて、VTuberやソーシャルSNSのプレイヤーも増えてきてモーキャプのニーズも高まっており、そうした流れの先にあるのが、今回のトラッカー(3.0)とVIVEフェイシャルトラッカーというわけだ。


小型化でより存在を意識しないで済むように

そんな流れを押さえて、新製品を見ていこう。まずはVIVEトラッカー(3.0)だが、ハードウェアで見ると、本体を小型化して、バッテリー稼働時間が長くなり、端子がUSB Type-Cに変わったというのが主なトピックだ。

具体的にいえば、サイズは33%減って幅70.9×奥行き79.0×高さ44.1mm、重量は15%減って75g、バッテリーが75%伸びて7.5時間となっている。小さく・軽く・長くなったことで、より長時間快適に利用できるようになったわけだ。一方、小型化に伴い、トラッカーが対応できる視野角は270度から240度と若干減っている。

実際、手に持った感じではかなりコンパクトになった印象だ。一見、高さも低くなったように思えたが、旧製品と同等だった。
裏側には旧製品同様のポゴピンと、三脚マウンター。

デモとしては、サッカートレーニングの「Rezzil」を体験した。トラッカーを甲の部分に装着したシューズを履き、足の位置をキャリブレーション。例えば、ランダムに飛んでくるボールを受け止め、半円状に並んだ複数のゴールの中から光っているところに打ち返したり、正面からくるボールを周囲で動く味方に正確にパスしたりと、実戦に即したトレーニングができる内容だった。

その場で旧製品と比較したわけではないので一概に言えないものの、足の甲の上でのトラッカーの存在感が薄れており、小型・軽量化された効果を実感できた。正直なところ、トラッカーがあることを意識せずに、ボールを受けて返すという行為自体が楽しく、コロナ禍におけるVRで運動の可能性を実感した(いい汗かけました)。

一方で、小さく・軽くなったということは、揺れやすくなる可能性もある。今回はきっちり固定できるシューズだったため、まったくずれる感覚はなかったが、アバターの操作などではよりしっかりとした固定が必要になりそうだ。


最大38種類の口の表情をキャプチャーで再現

一方のVIVEフェイシャルトラッカーだが、裏側に仕込まれた赤外線カメラで90度の範囲を照射。頬/口/唇/舌/歯/あご/あご先を検知し、38種類の表情に反映できる。

対応するVRゴーグルは、VIVE ProとPro Eye。赤外線カメラの角度を合わせるため、ほかは公式でサポートしていない。
装着したところ
Pro/Pro Eyeの左上にあるUSB端子より電源を供給する

キャラクターやアバターにおける表情はとても重要で、VTuberでは意図した面白さを出すためにあえてキャプチャーせずに、専門のオペレーターがコントローラーで操作していることもある。また、表情の取得に優れた仕組みを用意しているiPhoneを顔の前に固定してキャプチャーすることもある。口のみの場合、マイクの音を拾って反映していることも多い(リップシンク)。トラッカー+Pro Eye+フェイシャルトラッカーを利用することで、体/目/口まわりという広い範囲でアバター表現が可能になるわけだ。

開発では、アイトラッキングと同様の「SRanipal SDK」を利用。検知した表情を「SR-Runtime」プログラムが受け取り、UnityやUnreal Engineに渡してキャラクターに反映させる。
ブレンドシェイプの段階も表現。
対応する38種類の表情。アニメのように誇張した表情を仕込んで、口の動きで発動させることもできそうだ。

実際に試してみたところ、サンプルのキャラクターが上記のようないかつい男性だったため、VTuberや日本で人気の可愛いアバターの感覚とは遠かったものの、確かに豊かな口の表情を表現できた。

もちろんアバター自体にどんな表情を仕込むのか、「中の人」がどれくらいシンクロして使いこなせるのかといった前提はあるが、例えば口をすぼめた不満、歯を剥き出しにした怒り、舌を出してからかうといったような感情表現が、コントローラー入力なしで自然に出せるのは素直にメリットだろう。

現状、ソフトとしては、「バーチャルキャスト」や「NeosVR」といったソーシャルVRが標準で対応している。38の口の表情をサポートするアバターが増えてくれば、技術にあまり詳しくないユーザーでもより表情豊かなアバター体験ができそうだ。


VIVEは、「VR元年」と呼ばれた2016年から日本で認知されはじめ、広く受け入れられてきた。当初はゲームが先導すると見られていたVRだが、店舗で遊ぶロケーションVRだったり、職業トレーニングなどのビジネスだったりと、他の分野での活躍の場も発掘して強力に支えてきたのもVIVEだった。

そのブランドが、2021年でもVTuberやアバターという国内トレンドを支える動きをしているのは、とても興味深い。バーチャルの体で活動を始めたいという方は、ぜひVIVE Pro Eyeとトラッカー、フェイシャルトラッカーの存在を覚えておこう。

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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