アダストリア、ファッション特化型プラットフォーム「StyMore」をオープン 一部アイテムはUnityなしでVRChatへアップロード可能

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(左から)アダストリア田中氏、同島田氏、サンリオ町田氏

4月10日、EC売上高業界2位のアダストリアがファッション業界初となるメタバースプラットフォーム「StyMore」(スタイモアー)をオープンした。

「GLOBAL WORK」「niko and …」「LOWRYS FARM」などの30以上のブランドからなる、アダストリアの公式ファッションWEBストア「ドットエスティ」が2022年にアバター事業を展開して以降、ドットエスティのファッションブランド展開と並列したメタバースファッションアイテムの販売を手がけている。このほか、VRChat上での展示会開催やサンリオVfesでのコラボレーションなど、リアルとVRの回遊性を感じるブランド展開でVRChat上でのメタバースファッション業界の中で大きな存在感を放っている。

そんなアダストリアが今回発表したのが、ファッション特化型のメタバースプラットフォーム「StyMore」。これまではBoothにてアバター等を販売してきたが、ついに自社で制作から販売まで一気通貫する流れとなる。

しかも、単にアバターや服を販売するだけではなく、サイト上でアバターへのお着がえも完結するというのが注目ポイントだ。


PCがなくてもOK!初心者にうれしい「スタイモアー」の凄いところ

今回アダストリアが発表したファッション特化型のECサイトプラットフォーム「StyMore」の最大の特徴は、サイトで服を購入してから、Unityを介さずにVRChatにアップロードできるということだ。

好きなアバターや服を組み合わせてユーザー同士が交流するというメタバースならではの楽しみ方の中で、VRChatで遊ぶ最大の障壁は服を購入してから実際に使用する前に別の専門ソフトの操作が必要だったことだと思う。

VRChatにアバターをアップロードするために必要なUnityは、日本人としてはUIが全て英語であることの難しさや、その内容も馴染みのないCG用語だったりと、それまで3DCGに触れてこなかったユーザーにとっては操作するだけでも難しいと感じる方も多かった。ただアップロードするだけではなく、さらに自分好みに改変する場合はBlender等を操作するなど、アバターファッションを楽しむために3DCGの知識が少なからず必要なことがメタバースを楽しむ上での枷になっていた。

アダストリア ファッション特化型メタバースプラットフォーム発表会 MakeAvatar操作画面(スクリーンショット)

そんな、一般的には難しいとされていた部分をGugenkaのスマートフォンアプリ「MakeAvatar」を用いることで、服を購入して実際にVRChatで遊ぶまでの作業をサイト上で完結できる流れを構築しているところが初心者や、まだVR用のPCを持っていないユーザーにも嬉しい機能だろう。

StyMore(スクリーンショット)

現在は全てのアイテムがスマートフォンで完結できるようにはなっておらず、MakeAvatar対応のアイテムに限定されているほか、アバターもMakeAvatarのものになっている。対応アイテムには「MakeAvatar」のアイコンがついているので、Unityを触るのは難しいけどアバターファッションを楽しんでみたい! という方はぜひ購入してみよう。

将来的にはドットエスティから販売されているアバター等、MakeAvatar以外のアバターも対応したいという。


「StyMore」が目指すものとは? 担当者に聞いてみた

アダストリア・島田氏

ドットエスティがメタバースファッションに参入した2022年10月以降、アバターやアイテムを合わせて約1000万円の売り上げがあるという。企業としては物足りない数字に映るが、それでもプラットフォームを立ち上げるまでに至った理由について聞いてみると、現時点では会社の規模に対しての売上が少ないなか、メタバース市場という領域全体への可能性に挑戦したいという想いで作られているという。

アダストリア ファッション特化型メタバースプラットフォーム発表会 資料より

領域全体への可能性については、メタバース市場の消費が年々上がっていく予測が出ていることもあり、ファッション業界だけでなく幅広い業界で注目されているが、アダストリアとしてもこの流れに乗ってプラットフォームとして挑戦する形となる。

2023年にはVRChatのスマートフォン対応も始まり、これまでPCやVR機器を持っていなかった層も遊べるようになった結果、アバターファッションをハードルに感じるライトユーザーは増えていく事が予想できる。それを解決する方法として、今回MakeAvatarを導入したという。

アダストリア ファッション特化型メタバースプラットフォーム発表会 資料より

StyMoreに出品するのは個人クリエイターと企業。ドットエスティがメタバース展開した時からVRChat上で人気の個人クリエイターとのコラボレーションを実施していただけあり、個人クリエイターの活躍の場を提供したいという想いもあるという。

個人クリエイターによるVRChatのアバターや改変衣装の販売といえばVRユーザーからすると当たり前のように感じるかもしれないが、自社でファッションアイテムを開発・販売できるアダストリアが、あえて個人クリエイターにその場を提供するというのは、メタバースファッション業界の中で自然発生したファッションを楽しむ文化を大切にしている証に感じた。

サンリオ・町田氏

今回、出展企業として参加しているサンリオから、サンリオVfesを立ち上げた町田氏も登壇して、クリエイターが活躍できる場の提供や、それを企業として盛り上げることへ情熱的に語っていたのが印象的だった。

ドットエスティメタアンバサダーによるコラボアイテムの紹介

このStyMoreとサンリオの関係については、今回のサンリオVfesでもコラボレーションが実施されていたが、2回目のサンリオVfesが終わった段階で声がかかったという。結果的にサンリオVfesでのコラボレーションだけでなく、StyMoreの出展企業として参加した背景には、顧客への距離感が近く、クリエイターに寄り添うという方向性が合ったことが大きな理由だったと語る。

(TEXT by ササニシキ

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StyMore(スタイモアー)
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