【データで見る、ツイ伸び新人VTuber】2021年10月第2週はMillie Parfait、キルシュトルテ、姫妖精いちか

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企業・個人を問わず、毎日何十人もの新人がデビューしていくVTuberの世界。一方、すでに業界内には多くの才能が存在しているため、今の「推し」の動画・配信を追うだけで精一杯、新人まで気が回らないというVTuberファンも多いはず。そんな方に向けて送るのが本連載「データで見る、ツイ伸び新人VTuber」です。

分析・執筆は、Twitterのリストから随時3万人以上のVTuberのデータを収集して分析しているmyrmecoleonさんが担当。直近の7日間でTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを数名紹介します。


こんにちは。myrmecoleonと申します。今回も最近勢いのあるVTuberを紹介していきます。以下は直近にTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを並べたグラフです。過去に連載で取り上げたNimuさん、SquChanさん、蟻塚フォミカさん、もちこまめさん、紫宮るなさん、Mika Melatikaさんも引き続き伸びており掲載されています。今回はここからMillie Parfait(ミリー・パフェ)さん、キルシュトルテさん、姫妖精いちかさんの3名をピックアップ。伸びた原因も推測しつつ、プロフィールをまとめました。

VTuberリスト登録のTwitterアカウントから、2021年10月4日13時から11日13時にフォロワー数が5%以上増加したうちのフォロワー数増加上位
データはTwitter APIより取得(以下同じ)。記事で取り上げたアカウントの棒グラフはオレンジ色に変えている

Millie Parfait

初配信よりスクリーンショット

Millie Parfaitさんはにじさんじの英語圏向けプロジェクト「NIJISANJI EN」の新人バーチャルライバー。地獄を忍ぶ化け猫災厄の大魔女半悪魔。初配信では魔女狩りのように処刑された少女の物語地球に訪れて社畜のように働く物語が彼女の歌で紹介されています。黒猫の名前は「LUCIE」で、離れると両方とも死ぬとのこと。10月6日より活動開始、先輩の「LazuLight」「OBSYDIA」と同様に同期4名でユニット「Ethyria」を構成し、9日の初配信の後には4人が歌うオリジナル曲「God sees all」も公開・音楽配信されています。衣装等のデザインはQP:flapperの小原トメ太さん。

配信は主に英語ですが、タガログ語(フィリピンの公用語)も話せます。日本語で歌も作っていますがあまり得意ではなくGoogle翻訳を使っているとのこと。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」や「マジック:ザ・ギャザリング」などTRPGや卓上ゲームが好きなようで、初配信でもTRPG風にステータスを付けて自己紹介しています。日本のアニメが好きで、歌が得意で歌枠の配信もしており、また先日初めてASMR配信も行いました。同期、特にEnna Alouetteさんが好きで「結婚したい」とまで話しています。

活動開始から11日までに4万人以上が彼女をTwitterでフォロー、YouTubeのチャンネルも5万人以上が登録しました。「Ethyria」の4名の中ではNina Kosakaさんと並んでよく伸びています。フォロワーの傾向(該当アカウント群から300名超を無作為抽出の上フォローしているアカウントを集計。以下同じ)を見るとPomu Rainpuffさんを筆頭にNIJISANJI ENの先輩のフォロワーが8割を占めます。これと重なりも多いですがGawr GuraさんなどホロライブEnglishのメンバーのフォロワーも多いようです。

デビュー間もないこともあり、いまのところNIJISANJI ENの先輩らのファン層から注目を得ている印象です。これまでの「LazuLight」「OBSYDIA」のデビュー時と比較すると、海外のホロライブファン層とも重なるものの、すでにNIJISANJI ENとして独自のファン層が定着している様子がうかがえます。

キルシュトルテ

28日の配信よりスクリーンショット

キルシュトルテさんは個人で活動している男性VTuber。吸血鬼狩りに嫌気がさしてシャバに降りてきたゲーム小僧のエクソシスト。9月21日に初配信しましたが28日の配信より「取り繕うのをやめて本音で配信していく」と現在のスタンスに変更。活動はおもに「Apex Legends」などのゲーム配信。衣装等のデザインはほか複数のVTuberも手がける佐々米さん。

今回の7日間では460倍となる2万7000人以上が彼をTwitterでフォロー、YouTubeのチャンネル登録数も6万8000人近くと劇的に増加しています。このきっかけとなったのが葛葉さんの6日早朝のこのツイートへのリプライ。

葛葉さんのツイートに素早く反応したキルシュトルテさんと17LIVEでおもに活動してる吸血鬼VTuberの暁音さん(こちらも20倍となる4000人近くのフォロワーが増加)は実際に葛葉さんとのコラボに呼ばれることに(キルシュトルテさん視点)。エクソシストと吸血鬼2人の組み合わせに加えて、はじめからぐいぐい距離を詰めて、こちらから言ったとはいえ「葛葉」と躊躇なく呼び捨てるキルシュトルテさんにあの葛葉さんも反応に困るほど。葛葉さんは第7回Crazy Racoon Cupの練習カスタムの時期で、ランクでVCありのチーム戦の練習を兼ねてのツイートだったようですが、葛葉さんも「すっごいやつ入って来た」と言うほどの逸材が来てしまいました。

開始前は39人だったキルシュトルテさんの登録者はどんどん伸び、2000人を越えると「俺のチャンネルでも紹介しとくよ葛葉のこと」100万登録の葛葉さんに声をかけ、また葛葉さんを尊敬してVTuberになった友達が多いと暁音さんが話すと「俺に憧れてVTuberになった人とかいないの?」と聞き返すデビューから約2週間の新人に、笑いの絶えないコラボとなりました。APEX自体は普通に上手く、ラストの試合では3人でチャンピオンも取っています。

葛葉さんもキルシュトルテさんを気に入り、昔の自分を思い出したのか彼にアドバイスする一幕もあり、11日には二人で長時間APEXのコラボも行っています。またコラボでは傍若無人に見えたキルシュトルテさんですが、直後の雑談配信では手汗でマウスがビショビショになるほど緊張していたことを明かし、また謙虚に葛葉さんと暁音さんへの感謝を話しています。

7日間の新規フォロワーを見るとやはり8割が葛葉さんのフォロワーでほぼこのコラボの影響。ほかにじさんじの男性ライバーのフォロワーが若干見られました。

コラボ以前の配信でも真剣に「このVTuber業界に一石を投じる」「世界を塗り替える」と大きな目標を掲げていたキルシュトルテさん。突然降ったチャンスをしっかりつかみ、日和らないトークで注目を集め、劇的な伸びを果たしました。彼の今後の活躍が期待され、また彼のようにほぼ無名のVTuberにも逸材がいることを改めて広く気づかせる出来事となりました。

姫妖精いちか

自己紹介動画よりスクリーンショット

姫妖精いちかさんは個人で活動している女性VTuber。知識の大妖精。2020年3月頃からYouTubeで配信しており、2020年9月から現在のLive2Dモデルで活動しています。活動はゲーム配信やリコーダーの演奏動画が中心。料理が得意でよく写真をツイートしています。また数理モデルの作成が趣味で非線形常微分方程式系が専門、数学を中心に心理学や哲学など学術への関心が高く、ご自身のnoteでは数学の記事などをよく書いており、トークに自信がなくあまり投稿できていないが数学講座など学問動画を出したいとのこと。英語も堪能で海外向けの自己紹介動画も公開。スペイン語エスペラント語中国語ヒンディー語といろんな言語の勉強配信も試みています。

非常に大きな胸のビジュアルが目立ちますが実はこの胸はご本人準拠Rカップとのことで、リコーダーの演奏動画では首から下を映した映像をよく出しています。今回の7日間では35%増となる8100人以上が彼女をTwitterでフォロー、YouTubeのチャンネル登録数も5400名以上増加しましたが、これもご本人がツイートしたVTuberの胸の大きさに関するミームがきっかけとなりました。

https://twitter.com/fairy__ichika/status/1446476483652767759
VTuberは本物と見た目の違うペルソナでファンを釣ってる、という意見に「私は実際にRカップですよ」と英語で紹介したミーム

7日間の新規フォロワーを見るとProjekt MelodyさんやGawr Guraさんなど英語圏で人気の高いVTuberのフォロワーが半数ほど。残り半数ほどは多くはVTuberをフォローしていないアカウントで、他のフォロー先では胸の大きいキャラクターをよく描く海外のイラストレーターなどが目立ちました。英語圏のVTuberファンなどが注目した様子がうかがえます。

アニメなど創作物での胸の大きい女性のビジュアルはしばしば性的なものとして批判を受けることがあります。一方で、こうした体格の女性は彼女のように実在し、上記のような批判の言葉は彼女らへの侮辱にもなり得ます。姫妖精いちかさん自身は数学を好み、リスナーに「昭和の文豪とか哲学者みたい」と言われる性格で、そのビジュアルは既存のわかりやすくステレオタイプなキャラクター像とは合わないかもしれません。それでも自分自身の体型と合わせたビジュアルを選ぶことは非常に自然なことで、尊重すべきことです。

もちろんVTuberは本来の容姿通りである必要は無く、なりたい自分になれる手段でもあります。一方で自分らしくあるための手段でもあり、何を選び、何を選ばないか選択できるのがVTuberです。姫妖精いちかさんはそうしたことを改めて考えさせる好例と言えるでしょう。


(TEXT by myrmecoleon

 
●関連リンク
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