にじさんじ・森中花咲&御伽原江良の初ライブ「petit fleurs 1st LIVE『リシアンサス』」レポ コロナ禍の逆風にバルーンの声援が響く

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VTuber/バーチャルライバー事務所「にじさんじ」の人気タレント・森中花咲(もりなかかざき)さんと御伽原江良(おとぎばらえら)さんにより結成したアイドルユニット「petit fleurs」(プチ フルール)は11月20日、初ライブ「petit fleurs 1st LIVE『リシアンサス』」を東京都立川市にあるTACHIKAWA STAGE GARDEN(立川ステージガーデン)にて開催した。

2020年4月22日にフルアルバム「première fleurs」をリリースし、NBCユニバーサル・エンターテイメントからメジャーデビューしたpetit fleurs。本来は8月16日に初ライブを開催予定だったが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により延期。この日、さまざまな新型コロナ感染症予防も対策した上で、約3ヵ月遅れでのリアルライブがついに実現した。

当日は、ニコニコ生放送で独占配信もされた記念すべきワンマンライブをレポートしよう。なお、タイムシフトの視聴期間は、2020年12月3日23時59分までとなっている。


ライブの開幕前から応援用のスティックバルーン大活躍

2020年4月に完成したばかりのTACHIKAWA STAGE GARDEN(立川ステージガーデン)は、最大収容人数が約2500人という大型ホール。しかし、新型コロナウイルス感染症対策として、客席は左右に一つずつ空き席が設定されているため、開演時間が近づいても空きスペースが目立ち、止むを得ないことながらも少し淋しさも感じていた。そんな雰囲気を緩和させたのが、入場時に観客全員に無料配布された2本のスティックバルーン。

森中さんと御伽原さんのイメージカラーである黄緑とオレンジ色のバルーンは、軽く叩き合わせるだけで「ポムポム」とよく響く音を出すのだが、開演を待っている時間、突然、複数の観客がバルーンを鳴らし始め、それが他の観客にも伝播。会場の空気が急に盛り上がった。筆者は後で知ったのだが、御伽原さんがTwitterのサブアカウントで「現地組、バルーン急に叩いてスタッフビビらせろ」とツイートしたらしい。実際、スタッフも筆者と同じように驚いていたそうだ。

ライブ中もコールなど大声を出すことは禁止されていたのだが、バルーンの音は大活躍。petit fleursへの返事やコールの代わりに、ファンは楽しそうにバルーンを叩いていた。筆者は、今回のライブで初めて体験したのだが、コロナ禍の状況でも演者と観客の双方がライブをより楽むための工夫の一つとして、素晴らしいアイデアだと感じた。

また、開演の5分前には女性の声による場内アナウンス、いわゆる「影ナレ」が流れ出した。どこかで聴いたことがあるけれど誰だか分からない。しかし、素人とは思えないくらい綺麗で可愛いらしく、滑舌もはっきりした声。

過去のにじさんじのイベントでは、出演者ではない後輩ライバーらが影ナレを務めたこともあったため、「少し前にデビューした新人ライバーさんかな?」などと思っていたのだが、観客の反応で、声の主が御伽原さんだったことに気づく。「江良ちゃん」こと「きれいな御伽原江良」の声に騙されて謎の敗北感も感じる中、ついに「petit fleurs 1st LIVE『リシアンサス』」の幕が開けた。


petit fleursのアイドル衣装姿が初披露

開演前からスクリーンに映されていた本のページがめくられると、イラストとナレーションでpetit fleursの二人の物語が語られ、オープニング映像へと繋がっていく。

「この物語は、二人の女の子が夢をかなえる物語」

その物語は、1stアルバム「première fleurs」でも一曲目に収録されている「ミラフル**」から始まった。

曲が始まると同時に、アイドル衣装姿の森中さんと御伽原さんがステージに登場。中央に並んだり、すれ違って立ち位置を入れ替わったりと激しくポジションも変えながらキュートなダンスを踊りつつ、綺麗なユニゾンを響かせる。

二人とも、過去ににじさんじのライブイベントへの出演経験はあるが、アルバムのジャケットやライブのメインビジュアルにも描かれていたこの衣装でステージに立つのは初めて。しかも、普段は10歳の小学4年生だが、「オトナ」の姿にも変身できる森中さんにいたっては、「オトナ花咲」の3Dモデル自体が初披露だ。

本当は10歳の森中さんと大学生の御伽原さんがほぼ同じ背丈になったことで、二人並んだ時のユニット感はますます増していた。最後は、二人並んでウィンクしながら決めポーズ。運動量も多く、完全にアイドルなダンスに開幕から驚かされた。

 
2曲目の「プリンセス・モード!」は、ソロパートでの「かざちゃん」「ギバラ」などコールの入るポイントも多く、ファンの声も加わることで真の完成形になるようなライブ向きの曲だ。

声出し禁止の環境であることが残念ではあったが、その分、ステージ上の二人はお互いに熱いコールを入れ合い、客席のファンはリズムよくスティックバルーンを鳴らして、それを後押しする。おそらく楽曲が制作された時に想定されていたのとは違う形だが、演者とファンが一緒になって一つのステージを作ることは実現していた。

曲が終わり会場が暗転すると、真っ暗闇の中、息も絶え絶えな二人の声が聞こえる。給水し、呼吸が整った後は、そのままMCパートに。どうやら、映像系のトラブルが起きた様子だったが、雑談力も高い二人だけにファンに問いかけたりしながら、途切れることなく楽しいトークを展開していく。

 
準備が整った後の3曲目は、「ぷちふるぱありぃ♡」。冒頭からテンポの速い曲で、インターバルで少し静まった会場の雰囲気をまた熱くさせていく。この曲のダンスも運動量の多い振り付けだったが、曲中で何度か披露したジャンプが想像以上に高く綺麗で、二人に対して抱いていたイメージがまた少し更新された。

 
休む間もなく始まった4曲目は、声に出して読みたくなるタイトルと、そのタイトルも組み込まれた歌詞がユニークな「スーパーウルトラハイパーミラクルロマンチック」。2015年放送のアニメ「ヴァルキリードライヴ マーメイド」ED曲となる。

「ずっきゅん」とファンを撃ち抜くフレーズも可愛い。また、ソロパートでは、ハスキー気味でかっこよさも感じる御伽原さんの歌声と、繊細で透明感のある森中さんの歌声の対比も印象的だった。

 
曲が終わり、拍手代わりのスティックバルーンの音が鳴っている中、オタクなら知らない人などいない、おなじみのイントロが流れ出す。歓声は聴こえずとも、会場のテンションが急上昇したことを感じる中、二人が披露したのは、アニメ「とある科学の超電磁砲」の主題歌「only my railgun」。キーが高くピッチも速い難曲だが、ここまでの曲でも綺麗な高音を響かせていた森中さんだけでなく、御伽原さんも前曲のハスキーボイスから一転して、澄んだ高音を響かせていく。


突然のハプニングで森中さんが一人MCにも挑戦

MCでは、森中さんが「only my railgun」をカバーした理由を紹介。作品の舞台である学園都市のモデルが会場のある立川で、原曲アーティストのfripSideが同じレーベルの所属でもあることから選曲したそうだ。

そして、おそらく何らかのトラブルで御伽原さんがすぐにはステージに出られない状況になったため、急遽、一人でMCをすることになった森中さん。「MCとか苦手なんだけれど……」と少し不安げな様子も不憫で可愛い。

 
一人MCからそのままソロ曲コーナーが始まった。まずは、森中さんがアニメ「荒川アンダー ザ ブリッジ」の主題歌「ヴィーナスとジーザス」を披露。やくまるえつこさんの独特のウィスパーボイスで人気を集めた名曲は、森中さんの儚い歌声とも相性抜群だ。1stアルバムでもカバーしており、7月には歌動画も公開されているのだが、ライブで披露されるとは予想しておらず、嬉しいサプライズだった。

 
御伽原さんのソロ曲は、れるりりさんともじゃさんの人気ボカロ曲「聖槍爆裂ボーイ」。これまでの曲でもさまざまな声を使い分けてきたが、ここでは完全にカッコいいイケボモード。華やかで可愛いルックスとのギャップに驚かされる。また、背後のスクリーンに映る映像の中では、御伽原さんのリスナーなら既視感のあるコンセントが妙な存在感を発揮。お洒落な映像でありながら、思わず笑いそうにもなってしまった。

 
いったん、暗転したステージの中央にpetit fleursが登場すると、複数の赤いレーザーが交錯しながら二人を照らす中、古のオタクなら一度は聴いたことあるはずのイントロがまた流れ出す。アニメ「灼眼のシャナII」の主題歌「JOINT」だ。この曲では、御伽原さんだけでなく森中さんも比較的低めの力強い歌声で熱唱。原曲の川田まみさんの熱くパワフルな歌声をリスペクトしたカバーで、petit fleursの表現力の幅広さを照明した。


ソロ曲コーナーではそれぞれの個性が際立つ選曲

ここで、新型コロナウイルス感染症対策として館内の換気を行うために15分の休憩。開演から約45分で休憩を挟むライブは初めての体験で、感染症対策が徹底していることに改めて感心した。

休憩明けは、MCパートからスタート。休憩前のブロックで歌った曲の選曲の理由などを語った後、ステージに森中さんを残して、御伽原さんは退場。再び始まったソロ曲コーナで、まず森中さんが歌ったのは、1stアルバムに収録されたオリジナル曲「諦めモード」。

勝手な想像だが、「この曲を聴きに来た」という「くまさんず」(森中さんのファンの総称)も多かったはずだ。この「諦めモード」は、自他ともに認める(?)「最強の負けヒロイン」のために作られた「究極の負けヒロインソング」。歌声やダンス、ちょっとした仕草やふと洩れる吐息などが可愛ければ可愛いほど、ますます切ない気持ちになっていく。

 
歌い終えた後も、そのままステージのセンターに残る森中さん。スタンドマイクの前にスッと立ち、披露したのは、映画「ノーゲーム・ノーライフ ゼロ」の主題歌「THERE IS A REASON」。静かなイントロから壮大に広がっていくサビまで、透明感のある声で感情豊かに歌い上げていく。

 
ラストも伸びやかなロングトーンで締めた森中さんに変わって、御伽原さんが登場。「甘いのお好き?」というセリフの後、リズミカルなイントロが流れ出すと会場の空気が一変。オリジナルのソロ曲「Get!パティシエ★大作戦」だ。さっきまで森中さんの歌声に静かに聴き入っていた観客は、声を出さず立ち上がりもしないまま、バルーンやペンライトを振って急激に高まったテンションを表現し、ステージで可愛く元気に歌い踊る御伽原さんにその熱気を伝えようとしていた。

 
続く12曲目も御伽原さんのターン。1stアルバムに収録され、今年の5月にはカバー動画も公開された超有名アニソン、「うる星やつら」の主題歌「ラムのラブソング」だ。キュートな曲に合わせて、歌声もダンスも可愛さ全振り。スクリーンには大きなハートがいくつも浮かび、御伽原さんのパフォーマンスに夢中なファンの心を投影しているようだった。


初披露の新曲で客席が犬と猫に分かれて「大戦争」

MCパートでは、森中さんの「諦めモード」でスクリーンに流れた映像を初めて観た御伽原さんが「スタッフさんがティッシュを持ってきてくれるレベルで」泣いたというエピソードを披露。さらに、「THERE IS A REASON」での歌声も絶賛し、森中さんを照れさせていた。

また、次のパートでは新曲を披露すると予告。客席のステージに向かって右側は森中さんが率いる「犬チーム」、左側を御伽原さんの「猫チーム」とファンを二つに分けて、「わんわん」や「にゃんにゃん」という歌に合わせて、それぞれの色のバルーンやペンライトを振りながら応援勝負をして欲しいと説明した。

応援の練習もした後、披露された新曲のタイトルは「ぷちふるわんにゃん大戦争」。完全にライブ仕様で作られた曲で、スティックバルーンが存在感を大いに発揮。声の出せない状況でも、petit fleursの二人と客席が一緒になってライブを盛り上げていく。また、コールの入る泣き声パート以外も一度聴くだけで耳に残るリズムが続く曲で、1番を聴けば、2番からはタイミングをぴったり合わせてバルーンを叩けそう。今後のpetit fleursライブでも定番になりそうな新曲だった。

ライブ本編ラストの14曲目は、1stアルバムにも収録されている「トコハツハナ」。1stライブを締めくくるのにぴったりのポジティブな楽曲で、森中さんと御伽原さんの歌声とダンスも元気で明るさ全開。サビの前半でぴょこぴょこと左右にステップする動きも可愛らしい。スクリーンには、petit fleursの門出を祝うように満開の桜も咲いていた。ラスト、ステージ中央で方を寄せ合うように立った二人は目を閉じて手を重ね合わせる。その背後には、ライブタイトルの「リシアンサス」の文字が浮かび、二人の姿だけが、そっとステージから消えた。


「プリンシパル」で大団円

二人が去った後もステージに残る「リシアンサス」の文字を見て、何かを確信したのか、静かにバルーンを鳴らし始めるpetit fleursのファンたち。そんな静かなアンコールに応えて、森中さんと御伽原さんがステージに再登場。新曲の「ぷちふるわんにゃん大戦争」の感想などを客席にたずねた後、petit fleursのリーダーである森中さんの曲振りから、1stアルバム収録曲の中で、まだ歌っていなかった唯一の曲「プリンシパル」を披露した。

数々の名曲アニソンを生み出して来た音楽制作集団「I’ve」制作の楽曲で、青春アニメかゲームの主題歌のようにスケールが大きく爽やかな曲。ライブのラストに最大級の盛り上がりを見せて、今度こそ本当に、petit fleursの1stライブが幕を閉じた。

 
新型コロナウイルス感染症対策のため、さまざまな制約の中で開催されたこのライブ。冒頭で述べたスティックバルーンの配布など運営サイドの工夫もあり、開演前に筆者が想像していた「客席から歓声が聴こえないライブ会場」よりは、はるかに活気のある空間となっていた。

また、ステージに立つpetit fleursの二人も、客席からの歓声による後押しが無いという、ある種のハンデをまったく感じさせないパフォーマンスで、初めてのライブを笑顔のまま全力で走りきってみせた。

新型コロナウイルス感染症対策の中で開催されたライブの取材は、この日が初めてだったが、「この状況でも、やはりリアルライブは楽しい」と感じられたことは大きな成果。ルールを守りながら客席を盛り上げ続けたファンたちと、ステージから元気と熱気を放ち続けたpetit fleursの二人には、感謝の気持ちでいっぱいだ。

●セットリスト
M1.ミラフル**
M2.プリンセス・モード!
M3.ぷちふるぱありぃ♡
M4.スーパーウルトラハイパーミラクルロマンチック*
M5.only my railgun*
M6.ヴィーナスとジーザス*
M7.聖槍爆裂ボーイ*
M8.JOINT*
M9.諦めモード
M10.THERE IS A REASON*
M11.Get!パティシエ★大作戦
M12.ラムのラブソング*
M13.ぷちふるわんにゃん大戦争
M14.トコハツハナ

*アンコール
M15.プリンシパル

*はカバー曲


(TEXT by Daisuke Marumoto

 
 
●関連リンク
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