THE SEED ONLINE、VRでアイテム売買の未来がすぐそこに バーチャルキャストのひみつ(その3)【PR】

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バーチャルキャスト」といえば、ゴーグルをかぶってバーチャル空間に入り、アバターの姿で生放送したり、友達と楽しくコミュニケーションできる国産のソーシャルVRサービスです。本連載「バーチャルキャストのひみつ」では、同サービスに関連する話題をひとつ取り上げて、その魅力をお伝えしていきます。

 
●過去記事
【独占取材】バーチャルキャストはソーシャルVRに進化する──岩城CTO・山口CVOに聞く資金調達の理由
しゃべっている方向が自然にわかる音声アップデートに注目! バーチャルキャストのひみつ(その1)
オリジナルアイテムや背景を持ち込める「VCI」とは? バーチャルキャストのひみつ(その2)

*バーチャルキャストのダウンロードはこちら → https://store.steampowered.com/app/947890/VirtualCast/

 
今回取り上げるのは、アバターやアイテムなどの3Dデータを扱うプラットフォーム「THE SEED ONLINE」(TSO)。自作の3Dデータを投稿しておけば、バーチャルキャストをはじめとする関連ソフトに持ち込んで使えるというオンライン倉庫のような存在です。

最近では、3月25日にα版からβ版へのアップデートを実施し、投稿・持ち出せるデータの数が大幅に増えたり、見た目も改良して使い勝手がアップしました(ニュース記事)。開発を担当する3人にインタビューし、セキュリティーに注力する設計思想や、ストア機能などβ版で注目して欲しいポイントなどを熱く語っていただきました。

写真左より、デザイン担当の47氏、サーバーエンジニアのらっこやく氏、同じくサーバーエンジニアのsei氏


ゲームのようにアイテムを出し入れできる「インベントリ」

──現在、TSOは何人で開発していますか?

47氏 全部で7人です。バーチャルキャスト社は、ドワンゴとインフィニットループが共同で設立した会社ですが、TSOチームは全員が札幌でインフィニットループ出身です。

 
──今回、取材で札幌に伺ってインフィニットループの社内にバーチャルキャスト社のスペースがあるのに驚きました。みなさんどんな経緯でTSOチームに加わったのでしょうか?

47氏 僕はもともと紙媒体でデザイナーを10年ぐらい務めて、その後、職を変えてプログラムとデザインの両方をやるようになりました。インフィニットループではクラウド勤怠管理システムの「シュキーン」でリーダーを務めていたのですが、デザインの手が足りないということで2018年11月にTSOチームに加わっています。

らっこやく氏 僕はサーバーサイドのエンジニアで、同じように社内で手が足りないという要請があって参加しています。前プロジェクトは札幌にあるトミーウォーカーという企業からの依頼で、TRPGをウェブ上で遊べるプレイバイウェブのシステムを何作か開発してきました。

sei氏 私もほぼ同じで、受託案件でサーバーサイドのエンジニアをやっていて、プロジェクトを異動するタイミングで話を持ちかけられて、面白そうだったので2018年12月にTSOチームに加わりました。

47氏 そもそもインフィニットループがウェブ開発の会社なので、その流れでみんなTSOをやっている感じです。

 
──α版のリリースが2019年2月ですが、みなさんが開発に加わった当初はどんな雰囲気だったのでしょうか。

らっこやく氏 もともとTSOは、バーチャルキャストに3Dモデルを連携させるためにつくろうという話から始まっていて、せっかくなら汎用的に広く使ってもらえるサービスにしようというのが着地点でした。

47氏 TSOでは当初想定していた機能が結構あった一方で、α版はリリース時期が決まっていたので、必要な機能をぎゅっとまとめて出しています。今回のβ版でもまだすべてを出しきれていませんが、のちのち売買が可能になるストア機能をはじめ、初期の構想が乗ったものになっています。

 
──「私は変身をまだ2回も残している……」みたいにどんどん本来の姿に近づいていく感じですね。

sei氏 3Dデータを共有する手段は、α版では公開アイテムでしたが、β版ではストア機能に置きかわりました。それはバーチャルキャスト社としては、まずVCIをリリースして、ユーザー同士で3Dデータを共有してもらってUGC(ユーザー生成コンテンツ)のサイクルを回したいという意図があったからです。α版で公開アイテムとストア機能では内部のデータ構造が異なるため、3月25日のメンテナンスで移行処理を行いました。

 
──α版の公開後、ユーザーからどんな反応がありましたか?

らっこやく氏 アイテムはもともと「小道具」という名前だったのですが、例えば野球盤などユーザーのみなさんが思ったよりデカい物をつくっていたのが想定外で、スゴいなと驚きました。

sei氏 小道具なのにロケーション(環境)を丸ごとつくったりして、それって大道具じゃないかという。

47氏 3Dデータのカテゴリーとしては「アバター」、「アイテム」(小道具)、「ロケーション」(環境)という3つがあって、まとめて「アセット」と呼ぶようになりましたが、それぞれの領域を超えてつくられたものも多かったりします。

 
──UGCはユーザーのみなさんがどれくらい使ってくれるか、やってみないとわからない部分も大きいですよね。

47氏 そうなんです。カテゴライズも議論があって、同じキャラクターでも人間や動物、メカなど様々なので、個人的にはタグ機能が必要かなと思っています。

 
──niconicoのタグのようにたどって色々な発見があると使いやすそうです。

47氏 そうですね。検索手段が重要で、必要としているものを見つけるだけでなく、「こんなものもあったんだ」と気づいてもらう提案もしてもらえるとより楽しく使ってもらえるんじゃないかなと。

β版のストア機能に関連していうと、アセットのアップロード数が30個から300個に、取り込み数が30個から無制限に増えて、ゲームでよく使われる道具箱のような「インベントリ」という仕組みを取り入れたのが新しいです。

バーチャルキャストでは、ヘビーユーザーほどアイテムの出し入れが多いのですが、α版では取り込みをする必要がありました。例えばアバター10体を全部取り替えようとすると、10体分取り込み解除を行った後に改めて10体分取り込む必要がありましたけど、β版ではインベントリ上でまとめてチェックを入れて保存し、連携アプリ側で更新をかけると入れ替わります。

らっこやく氏 β版では、ユーザーが取り込んだものはいったん倉庫に入って、その中から一部だけ「サイドバック」のようなインベントリに持ち出すイメージです。

 
──確かにTSOのユーザーはゲームに慣れ親しんでそうなので、理解しやすそうです。

らっこやく氏 ユーザーインターフェースも継続的に研究してて、他社さんのサービスで一見「なぜこんな挙動をするのかな」という仕様も、自分たちでつくってみると「なるほど、これだから使いやすいのか」と苦労がわかる部分もあります。

47氏 ただ、世の中にあるオンラインショップって物理的に存在するものを販売しているのがほとんどなので、参考にはなるのですが、そこからさらに3Dデータを販売するのに適しているかを考えてデザインしました。

らっこやく氏 ユーザーのストア機能は現状、無料で共有するだけで、まだ販売はできないのですが、今後はアバターやアイテムを売っているクリエイターの方々にぜひ使ってほしいです。自分でダウンロードして各種アプリに取り込んでもらうのではなく、管理をTSOに任せられます。

 
──Amazonなどで電子書籍を売るような感覚でデータをアップロードして、気軽に販売できるという。

らっこやく氏 それに近いですね。

47氏 ストアといっても自分の店舗ページをつくる必要はなく、アイテムをアップロードして、公開したいのか、商品にするのかを選んで、タイトルと詳細と値段をつければすぐに売れるという簡単な流れですぐに販売できてしまいます。

 
──となると、3Dデータを無断で販売されるというリスクもありそうです。

47氏 そこはストアに公開する前に審査があって、それを通らないと販売できない仕組みなっています。


ユーザーのIDであるアバターを守りたい

──データの共有というと、バーチャルキャストに限らずさまざまなアプリと連携して、データを取り込んだり渡したりできるのもTSOの利点です。アプリの作者でも連携したい方が多そうですが、具体的にどうすればいいのでしょうか?

sei氏 個別契約のうえで開発者にSDKとドキュメントをお渡しして使っていただくのですが、実は内部で「SDK2」と呼ばれているセキュリティーを強化したものをつくる予定があって、そちらの利用を推進したいため、現状お問い合わせいただいても止めている状態です。SDK2については、追ってリリースのタイミングをお知らせできると思います。

 
──VRゲームでもVRMのアバターを取り込んで自分の姿で遊べますというものが増えているので、ニーズがどんどん高くなっていくと思います。

らっこやく氏 僕はMMORPGやTRPGが好きで、自分のアバターにも愛があります。だからTSOを介してVRMMOなど、自分のアバターを色々なアプリで使える世界になるといいなと思っています。

 
──VRに限らず、普通のスマホゲームやなんならSNSのアイコンにアバターを連携できてもいいと思います。

らっこやく氏 そう、VRじゃなくても3Dモデルを使うアプリなら持っていけるんです。インフィニットループで出しているバーチャルキャラが勝手に日本中を回る「Vタビ」というアプリもTSOと連携していますが、スマホの画面に自分のアバターが現れただけでも嬉しかった。そういう未来に近づけていきたい。

sei氏 私もPSO2で延々とキャラクリ(キャラクター制作)をやっていたので、自分がつくったキャラクターを連携サービスで遊びたい気持ちはわかります。究極的にはTSO自体にキャラクリの機能がほしいです。

 
──SDK2でセキュリティーを強化するという話が出ましたが、その辺が鍵になるのですね。

らっこやく氏 アニメやゲームの有名作品に出てくるキャラクターやアイテムをバーチャル空間で使いたいという要望がある一方で、ソーシャルVRでは3Dモデルを不正にダウンロードして勝手に使われるという問題が実際に起こっていています。そんな状態では権利元も安心して利用許諾を出せない。

そうした理由もあり現状SDKはNDA(秘密保持契約)を結んでいただいたうえで使っていただいています。しかしもっと手軽にSDKを使いたいというお話も多くいただいていますので、なんとか手軽さとセキュリティーを両立できないかと研究開発しているところです。

sei氏 アバターはやっぱりユーザー自身のアイデンティティで、それを盗まれるのは絶対に嫌じゃないですか。将来的にVR世界が発展して全員が自分のアバターを持つようになったときに、盗難されて使われるのは絶対に嫌なので、まずそれを阻止できる仕組みがないとVRの世界が成り立たない。

例えば、TSOにはユーザーが投稿した3Dデータをリダクションする「VRM Modifier」という機能があります。3Dモデルのポリゴン数を減らして各種アプリで扱いやすくしているのですが、ビューワー機能などからデータのリクエストを受けるたびにサーバーで処理しているので逐次CPUの使用率が跳ね上がっています。もちろんウェブコンテンツを最適化して配布するCDN(コンテンツデリバリネットワーク)で処理を軽減する手法もあるのですが、セキュリティーを優先して使っていません。

 
──あえて面倒くさい仕組みにしているという。

sei氏 それでいてSDKのセキュリティーと並行し、アバターの再現クオリティーにも気をつかっていて、われわれの管轄ではないですが、ポリゴンリダクション周りの研究も結構長いことやっています。

らっこやく氏 東京のチームで「リダクションするとスカートのここが欠ける」「単純に減らすと手が変になる」と細部を気にして再現性にこだわっています。

 
──画像でJPEGの圧縮率を下げてドットが荒くなるという話と違って、形状が違うと雰囲気が変わってしまいますしね。しかし、今後、連携アプリが増えていくに従ってサーバーの負荷が増えていきそうです。

sei氏 実はわれわれソーシャルゲームという高パフォーマンスを求められる案件もやっていたので、仕事柄、息をするようにパフォーマンスチューニングをしてしまうのです。コードレビューでも「ちょっとこれパフォーマンス悪いんじゃないの?」とツッコミが入ったりと、チーム全体でも気にかけています

らっこやく氏 3Dモデルで、普通の画像よりデータ量が大きいぶん気にしていて、もしかしたら今後ユーザーが増えたときに、本当の「戦い」になるのかもしれません。

 
──それはありそうです。

47氏 連携の話では、今はゲームやアプリの話が多いのですが、3Dキャラクターのアニメーションをつくるときに連携して、映像作品のストレージとしても使えるんじゃないかと思っています。セキュリティーも担保しているので、キャラクターだけ非公開で上げておいて、自社アプリに取り込んで使うこともできる。本来は共有アプリなのですが、そうした利用方法も広まっていくといいのかなと思っています。

 
──業務用ソリューション! そうなるとバージョン管理も求められそうです。

らっこやく氏 実は今でもアップロードごとにバージョンも管理していて、管理画面からは見られます。だから盗んできたモデルを売っていて、ばれそうになったら差し替えるみたいな悪いことできないんです。


クソコラが生まれるほど社内では愛されている「シードさん」

──ものすごく余談ですが、TSOといえば初期アイテムとして存在しているアバター「シードさん」が気になるところです。

47氏 シードさんは、β版の先で処遇をどうしようかという話が出ていまして……。

sei氏 シードさんはα版でもアップロードの30件、取り込みの30件とは別枠の特別なアイテムとして設計しているのですが、勘違いされている方も多くて、なぜシードさんだけ残っているのかという声をよくいただきます。

47氏 完全な冤罪という。あとは下着なのか服なのかわからない状態なので、これはかわいそうなんじゃないかという声もあります。

らっこやく氏 元々、シードさんは、モバゲーのデフォルトアバターのようにログイン時にTシャツ白短パンで、これからアイテムを買って装着させていこうという思想だったのです。あとはジェンダーフリーを意識して男か女かわからないようになっているのですが、蓋を開けてみると全然使われていない。

sei氏 最初期の構想の名残で、方針転換があって残ってしまったという。

 
──アバターはVRMで書き出せるキャラクリのソフトも多いですし、みんな自分の好きなのを持ってきちゃいますよね。

らっこやく氏 そうなんです。かわいそうなのですが、無用の産物になってしまった。シードさんをどうすべきかというのは、我々の中でも課題で、帰社間際に突然「どうしようか……」と話題になることもあります。

47氏 そもそもアイテムページで「将来的にアップデートで削除可能になる予定です」と書かれているのも哀愁漂っているという……。

らっこやく氏 TSO全体の「よくあるご質問」の2番目が「シードさんを削除したい」ですからね……。

 
──切ない(涙)

47氏 でも社内では愛されているんです。

sei氏 Slackにクソコラが流れてきたりします。

 
──ちょ(笑)

47氏 表情も乏しいのですが、何かと合わせると味が出るんです。シードさんはともかく、ストア機能が実装されたTSOでは今後、有名作品のアバターやアイテムを販売したり、プロモーションとして配布して、ユーザーがそれを使って遊べるようになっていきます。

その背景には、バーチャルキャスト社がドワンゴとインフィニットループの協業で、ドワンゴと角川のつながりがあります。まだまだVRの世界を体験したことがある人は少数ですが、わかりやすく、もっと楽しく3Dの世界を体現できれば、一般への普及も加速できるのではと考えています。TSOがその入り口になれるように尽力していくので、みなさんぜひご活用ください。

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