にじさんじ・樋口楓、1stミニアルバム「i^x=K」発売インタビュー 「自信を持って『うん』と言える、どれも私が大好きな曲」

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所属する「にじさんじ」だけではなく、VTuber界全体を代表するボーカリストの一人として活躍を続け、2020年3月25日には、1stシングル「MARBLE」でLantisからメジャーデビューを果たした樋口楓さん。

2021年8月25日にリリースした2ndシングル「Baddest」では、メジャーデビュー前からの夢だったアニメタイアップも実現。YouTubeでの配信活動と、メジャーレーベルでの音楽活動を両立させながら、独自の存在感を発揮し続けている。

そして、2022年5月25日には、メジャー1stミニアルバム「i^x=K」をリリース。「いこーるわたし」と読ませる一見不思議なタイトルや、こだわり抜いた収録曲に込めた思いなどを、ロングインタビューでじっくりと語ってもらった。

自分の楽曲だからこそ、言わなきゃいけない

──樋口さんは、2022年3月でメジャーデビュー2周年を迎えられました。この2年の間で心境面で大きな変化はありましたか?

樋口 以前は音楽を心で聴いていたんですけど、年々、頭を使って聴くようになってきたことは変化かなと思います。


──「この曲を好きなのはなぜだろう?」といったことをより深く考えるようになったのですか?

樋口 いえ、変わったのは、自分の楽曲に関してだけです。私以外の方がリリースされている楽曲に関しては、以前と変わらず、気の向くままに聴いて、ただ楽しんでいます。自分の楽曲に関しては、1年目とか最初の頃は何が正解か分からなくて。大人のスタッフさんが正解とするものをリリースしようとだけ思っていました。でも、段々と、トラックダウンとかの作業中に、自分の思う音楽の正解とは少しずれている場合には、気付けるようになってきて。それを言葉にして伝えられるようになったというか、自分の楽曲だからこそ、言わなきゃいけないんだってことに気づけたのが、この2年での成長だと思います。


──以前は、自分の意見を言うことに、遠慮のようなものがあったのですか?

樋口 意見を求めてはいただいていたんですけど、やっぱりみなさんプロの方々で、私よりも音楽活動の経験が豊富な方々なので、本当に言ってもいいのかが分からなかったんです。でも、言わないと自分の感覚とは永遠に違和感があるままだし、そんな形でリリースするのは、自分にとっても、自分を応援してくださってる方に対しても失礼だと気づいてからは、自分の意見を細かく伝えるようになりました。


──おそらく、時期が重なっただけで、音楽活動とはあまり関係ないのかもしれませんが、この1、2年で、配信者としての樋口さんの交流関係が、すごく広がっている印象があります。音楽活動のように、配信者としての活動スタイルに関しても、何か心境の変化があったのでしょうか?

樋口 ひとつは、配信者の間で人気のゲームをやるようになったことの影響は、大きいかなと思います。


──大会などにも出場している「Apex Legends」ですね。

樋口 そうですね。そもそも、VTuberになった最初の頃は、「にじさんじ」以外の方ともコラボの幅を広げたいと思って、外部の方とも(積極的に)コラボをさせていただいていたんです。でも、喜んでもらえる声もあれば、もっと「にじさんじ」内でコラボして欲しいという声もあったので、あまり積極的に外部の方とのコラボをやらなくなってしまいました。当時は、いろいろな人の意見を全部聞くことで、みんなが思う「正解の樋口楓」にたどり着くものだと思っていたので。

でも、後輩のライバーさんが増えてきて、みなさんがそれぞれのやり方で活動していく姿を見ていて、私もみんなが思う樋口楓じゃなくて、自分自身の心を持った樋口楓として生きていかなきゃダメだと思うようになったんです。そう思うようになってからは、またいろいろな人と絡むようになった気がします。自分ではっきり意識して変えたわけではないですが、多分、無意識にそう思っていたのかなって。そういう意味では、「にじさんじ」に入ってきた後輩のライバーさんの存在で、自分自身が変われたんだなと思います。


──そう思うようになった時期に、3人チームでやる人気ゲームの「Apex Legends」にはまって、交流の幅が広がっていったのですね。

樋口 元々、私は(MMORPGの)「マビノギ」以外に、大人数でできるオンラインのゲームに関わってこなかったので、何でコミュニケーションを取ればいいのか分からなかったんです。「Apex Legends」にたどり着いたことで、いろいろな関わりが広がっていったのは、自分でも感じています。「Apex Legends」よりも前に流行った「PUBG」とか「Dead by Daylight」とかにも関わっていれば、もっと早くから交友関係が広がっていたのかなって、今になって考えたりもします。ゲームは苦手だからやってなかったんですけど、やっぱり、苦手なことにも挑戦するべきだったなと思いました。


──確かに、FPSなどのアクションゲームを熱心にする印象はありませんでした

樋口 私たちにじさんじの1期生や2期生って、元々、ゲームが得意なメンバーというわけではなくて。ゲームの得意な方たちが入ってきたのは、その後のゲーマーズからなので。差別化じゃないですけど、ゲーマーズの人はゲーム、他の人は雑談やコラボもするみたいなイメージが初期の「にじさんじ」にはあったので、何となくその枠に乗っかっておこうみたいな気持ちもどこかにあったのかなって。誰からも、そんな制約はされていなかったんですけどね。


どれも大好きな曲という気持ちのこもったタイトル

──音楽の話題に戻るのですが、5月25日にリリースされるメジャー1stミニアルバム「i^x=K」は、どのようなコンセプトで作られたミニアルバムなのでしょうか?

樋口 例えば、2ndシングルの「Baddest」のときは、アニメのタイアップが決まっていたからカッコいい曲にして、カップリングの2曲も負けないぐらい強い曲をつくろうみたいな明確なコンセプトがあったんです。でも今回は、特にそういうものがなくて。樋口楓の好きな音楽、今まで聴いてきた音楽を詰め込もうというのがコンセプト。例えば、ファンクが好きという話は、以前から配信でもよく言ってたので、こういうジャンルの音楽をあまり聴いたことがなかった人に聴いてもらう機会になればという気持ちも込めて、「恋すな」というファンクの曲をつくったりしました。


──「i^x=K」と書いて「いこーるわたし」と読むタイトルを見たとき、最初は驚いたのですが、意味を知れば覚えやすいし、すごく面白いタイトルだと思いました。このタイトルが生まれた経緯などを教えてください。

樋口 アルバムのタイトルをつけるときには、スタッフさんと案を出し合ったりするんですけど、今回は収録している6曲全部の方向性がバラバラだったので、なかなか決まらなくて。スタッフさんも「どうしよう」みたいな感じだったんです。それで、かっこいい英語や漢字ではなく、全部に共通してるような言葉をタイトルにできたらっていうのがまずありました。それから、発売日が5月25日で、5の2乗は25だから「私に何をかけても私」という言葉が浮かんで。「私のx乗は樋口楓」を表現したタイトルにしたいなってスタッフさんに話したところ、iは虚数だからとか数IIIの知識も混ぜ合わせて考えてくださって。「i^x=K」というタイトルになりました。


──「私に何をかけても私」というのは、アルバムのタイトルとしては、すごくポジティブな言葉だと思ったのですが、最近そういった心境になったのでしょうか? それとも、樋口さんにとっては、昔からのポリシーだったりするのでしょうか?

樋口 さっきもお話した通り、昔は全員の意見を聞いて全員に好かれなきゃいけないみたいに思っていたところがあるんですけど、段々と自分がやりたいことをやるのが一番だなって思えるようになってきました。今回のミニアルバムの曲はすべて、自分の好きな音楽をオーダーして作曲や作詞をしてもらっているので、「万人受けする曲か?」と聞かれたら、自信を持って「うん」とは言えないんですけど。「樋口楓が好きな曲か?」って聞かれたら自信を持って「うん」と答えられます。そういう意味では、自信というか、どれも私が大好きな曲だよ、という気持ちのこもったタイトルかなと思います。


結城アイラさんに作詞指導をしていただけた

──6曲収録されているオリジナル曲について、順番に伺っていきたいと思います。1曲目の「あああああ」(読みは「あ~あ」)は、作曲と編曲が、メジャーデビュー時から音楽プロデューサーを務めている光増ハジメさんで、作詞が樋口さんという組み合わせです。「メジャーアーティスト樋口楓」の活動の中軸といえる組み合わせによる楽曲ですが、どういうイメージから生まれた曲なのでしょうか?

樋口 私は吹奏楽をやっているのですが、吹奏楽ってけっこう変拍子の曲があるんです。1234、1234じゃなくて、1234、1234、123、123みたいなリズムの曲を課題曲以外の自由曲で選んで演奏する学校がけっこうあって。私の学校もそうなんです。それで、そういう変拍子の楽曲にしたいですとオーダーをしたら、光増さんが頑張ってつくってくださいました。だから、歌っても聴いても、けっこう難しい曲だなって思います。


──最初に聴いたとき、絶対にカラオケで歌えないタイプの曲だなと思いました。

樋口 あはは(笑)。こういう変拍子の曲は吹奏楽あるあるみたいなところもあるので、樋口楓を知ってる方には、何か感じ取ってもらえたりもするんじゃないかなって思います。曲ができた後、作詞を誰にお願いするのか決める前に、ワンコーラスだけ歌詞が降ってきたので、それをぱぱっと書いて、「こんな詞がいいです」っていう意味で渡したんですよ。

そうしたら、スタッフさんが「自分で書いてみる?」と言ってくれて、作詞をさせていただくことになりました。でも、変拍子の曲の作詞を担当することなんて、なかなかないですし、私は初心者なので難しかったです。今回、(歌手で作詞家でもある)結城アイラさんに、作詞指導をしていただけて、ありきたりな言葉とか、自分の感情とかになっちゃいがちなところを、歌詞として綺麗に見せる技法とかも教えていただいて。結果的に、すごくいい楽曲になったと思っています。


──2曲目の「ジブンなジブン」は、「あああああ」とはまったく違う爽やかな曲調の曲ですが、どのようなイメージから生まれた曲なのですか?

樋口 女の子の爽やかな曲と、男の子の爽やかな曲って、少し違うと私は思っていて。アルバム(「AIM」)のときに、「アブノーマルガール」という女の子の爽やかな曲をナナヲアカリさんに作っていただいたので、今回は、男の子の爽やかな曲を作りたいなと思って。男の子向けのアニメの曲とかを担当されている佐伯youthkさんに、爽やかでいて、手に汗握るような疾走感もある曲を作ってくださいと、お願いしました。


──男の子の爽やかを特に感じるお気に入りのフレーズがあれば教えてください。

樋口 「いっすか」とか語尾のちょっとイカつい……というか、少しラフな感じがいいですよね。ちょっと斜に構えたような曲は歌ったことあったんですけど、これは等身大の男の子ような感じ。私は男の子じゃないですが、今まで見てきたアニメの主人公の爽やかな男の子をイメージしながら歌いました。


──3曲目の「怠ッセイ!怠ッセイ!」も、すごくリズムの楽しい曲ですが、この曲に関しては、どういったオーダーから生まれた曲なのですか?

樋口 分かりやすい言い方をすれば、ガールズバンド的な曲をイメージしてつくっていただきました。和音も混ざりつつ軽めのサウンドだけど、ピコピコし過ぎてもないみたいな。パンクまではいかないんですけど、結構アップテンポだし、歌詞の内容もちょっといかつい感じになっています。私の友達でガールズバンドをやっていて、こういう感じの曲を歌ってる子も多かったりして。私はバンドをやったことはないので、こういうのもいいなあっていう憧れみたいな思いもありつつ、つくっていただきました。


──歌詞は、少し柄が悪くて、コミカルさもある印象です。

樋口 学校にいるヤンキーと仲のいい樋口楓を想像してもらったら、分かりやすいんじゃないかなと思います(笑)。


──とても分かりやすいです(笑)。今はまだリアルライブの会場で声を出しての応援は難しい状況ですが、コールアンドレスポンスを含めて、すごくライブ映えしそうな曲だと思いました。

樋口 「怠ッセイ!怠ッセイ!超怠ッセイ!」のところとかは、声が出せるようになったら、みんなに言ってもらえたり、(配信ライブでは)コメントを打ってもらえたりするんじゃないかなと思っています。


力一さんの思う樋口楓像を書いていただいた

──次の「GODDESS」は、作詞がにじさんじの後輩にあたるジョー・力一(りきいち)さんということに驚きました。3月のカラオケ配信(下記動画)で発表されたとき、詞から先に作ったと仰っていましたが、どういった理由で力一さんに歌詞をお願いしたのでしょうか?

樋口 樋口楓がメジャーデビューできたのは、ファンの方に作っていただいた曲がきっかけだったので、ファンの方から見た樋口楓の曲はたくさんあるんです。だから、今回は、身近にいるライバーさんから見た樋口楓の曲をつくったら、どんな風になるんだろうと思って。

「にじさんじ」のメンバーの中で作詞経験のある方とかを調べたんですけど、力一さんは、(所属するユニットの)「Rain Drops」の曲でも作詞をされていますし、普段は面白おじさんなのに、すごく深い切なめの歌詞を書かれるので、樋口楓の曲の歌詞を頼んでみたいなって思ったのがきっかけです。「力一さんに書いていただきたいんです」とスタッフさんに伝えて、お願いをした形になります。


──樋口さんと力一さんが同じライブやイベントに出演されているのは、何度か観たことありますが、配信で絡んでいるのは、あまり記憶にないのですが。

樋口 配信上での絡みは本当に少なくて。お互いに配信上で見たことくらいしか知らなくて、他のライバーさんから少し話を聞くことがあるくらいの関係なんです。でも、力一さんは、いろいろな観点がユニークな面白おじさんだし、性別も、年齢層も、ファン層も、普段やっていることも全然違うので。そういった真逆の人に、樋口楓はどう見えてるんだろうと思ってお願いしました。


──内容に関する細かなオーダーなどはなかったのですか?

樋口 力一さんから見た私がどう思われているのかも分からなかったので、まず一度、力一さんが思う樋口楓像で書いていただきたいと思って、スタッフさんからもそう伝えていただきました。その上で、力一さんが「劇場版(ドラえもん)のジャイアン」のイメージと樋口楓を重ねて書いてくださったのが、この詞になっています。


──テレビの意地悪なジャイアンとは違って、ガキ大将だけど優しく頼りがいのあるジャイアンですね。その最初の歌詞をベースに、細かな調整をしたのですか?

樋口 いえ、歌詞を直しもらったりはほぼしていなくて。一箇所、力一さんが、その歌詞を入れるか迷ってる場所があって。Dメロの「『世間体』鉄拳『制限』鉄拳 『越権』鉄拳『低減』鉄拳」というところなんですけど、私的には、韻を踏みまくって面白いなと思ったので「入れて欲しいです」って伝えたりとか。曲の長さが長くなってしまうから、少し削ってもらったりはしたんですけど、歌詞の内容に関しては、全く口出しはしていません。せっかく力一さんの思う樋口楓像を書いていただいたのに、私が手を加えたら、違うものになっちゃうなと思って。劇場版ジャイアンとしての詞を、そのままいただきました(笑)。


──力一さんから見た樋口楓は、曲の冒頭から、いきなり「メンチ切る」わけですね(笑)

樋口 以前、(ジョー・力一と舞元啓介のラジオ配信)「舞元力一」に出していただいたとき、私がスーパーの鮮魚コーナーに並んでる魚にメンチを切ってるみたいな話をしたんです(笑)。たぶん、それがきっかけになってる歌詞だと思います。


──コアなファンなら分かるネタなんですね。

樋口 そういうネタも散りばめて入れてくださっているみたいです。


──力一さんの詞だけでなく、曲に関しても樋口楓さんのいろいろな面が現れた変化の大きい曲だと思いました。力一さんの詞に、この曲がついてきたときには、どんな印象を受けましたか?

樋口 詞を先に作る曲って、私は経験がなかったので、力一さんの思う通りの曲になっているのかは気になりました。でも、力一さんもこの曲でよかったと言ってくださったので嬉しかったです。最後、突然(曲調が)しおらしくなるので、「力一さんから見た私って、これで合ってますか?」って聞いたら、「劇場版のジャイアンが、最後にみんなで肩を組んで円になって歌ってるシーンが思い浮かんだので、いいと思います」って(笑)。途中のコーラスにも「あ~あ~」とか入っていて、ライブでファンのみなさんも声を出せるようになったときには、みんなで肩を組んで歌えるような曲になっていて。力一さんも、そういうシーンを想定して作詞してくださったそうなので、狙い通りの曲になっていると思います。


「FANTASIA」でお披露目予定だった「イロドレ・ファッショニスタ」

──すでに先行配信されている「イロドレ・ファッショニスタ」は、一転して、可愛さを全面に感じる印象の曲です。

樋口 曲のコンセプトとしては、ちょっとバブリーな歌謡曲みたいな曲がいいなって。そういう曲は家族が聴いていたから、私も好きだったし、どこか聞き馴染みがあるから、きっとみんなも好きだろうな思って。まずはその方向性で作曲をしていただいたんです。あと、この曲のコンセプトに関わる話なのですが、実はこの曲は、ご時勢的な事情で開催中止になった「(にじさんじ 4th Anniversary LIVE)FANTASIA」でお披露目する予定だったんです。


──そうだったのですか!

樋口 私も出演予定だった「DAY1」には女の子8人が出演予定で、お揃いの可愛い衣装があるし、みんな女の子らしい可愛い曲を歌うだろうと思ったので、この曲もバブリーな曲ではあるけれど、「FANTASIA」にも合うような可愛いポップな曲にしてもらおうと思って、作詞を安藤紗々さん、編曲をPandaBoYさんにお願いすることになりました。お二人には、以前、「現代社会、ヒロインは!」と「ikiteku.」も作っていただいたのですが、その曲が好評だったので、今回もお願いしたいということになっていたんです。


──最後のオリジナル曲「恋すな」は、最初にお話にも出た曲で、人気ファンクバンド「在日ファンク」のメンバーの制作した曲ですね。

樋口 元々、ファンク自体が好きなのですが、日本のアーティストさんの中でも在日ファンクさんが好きだったので、今回、ご依頼させていただきました。詞の内容に関しては、作詞と作曲の浜野(謙太)さんと、1時間半か2時間ぐらいお話をして。「VTuberとはなんですか? どんな活動をしてるんですか? アイドルなんですか?」みたいなことから、「どんな曲を作りたいですか?」とか、「好きな食べ物は?」みたいな世間話まで、お話しをさせていただいたんですけど。たぶん、私が普段からファンの人に「ガチ恋をして欲しくない」って言ってると話したことが浜野さんに刺さって、「恋すな」という曲になったのだと思います(笑)。


──よっぽど、印象的だったのですね(笑)

樋口 あと、これは雑談配信とかでも話したか分からないんですけど、私、軟骨が好きで。人が食べてるチキンに軟骨がついてたら、その人の残した骨をもらって、軟骨だけ食べるんですって話をしたら、浜野さんがけっこう笑っていて。「軟骨ちょうだいちょうだい」って歌詞ができたのだと思います(笑)。


──刺さるポイントが面白いですね。

樋口 独特な感性をお持ちの方なので、面白おかしい曲になっても大丈夫ですということはお伝えしていました。


──今回のミニアルバムには3形態あり、オリジナルの6曲だけが収録された「通常盤」である「樋口盤」の他、異なるカバー曲も2曲ずつ収録された「初回限定盤A(𝓚𝓪𝓮𝓭𝓮盤)」と、「初回限定盤B( ح゙ʒ~ƕ盤)」も同時発売されます。どのようなコンセプトで、こういった形での展開となったのかを教えてください。

樋口 全部自分でイコール私なんですけど、ライブとかで樋口楓をカッコいいと思ってくれている方もいれば、キレ芸だったり、ゲーム実況でワーワー叫んだりするところを見て、樋口楓は面白いって思ってくださる方もいると思って。かっこいい私で「(𝓚𝓪𝓮𝓭𝓮盤)」、面白い私で「ح゙ʒ~ƕ盤)」という方向で差別化しようと考えました。


──「(𝓚𝓪𝓮𝓭𝓮盤)」に収録された「COLORS」と「GATEⅡ~世界を超えて~ 」は、どちらも聴くだけでテンションが上がる王道のかっこいいアニソンです。では、「ح゙ʒ~ƕ盤)」の方は?

樋口 こっちは、樋口楓が歌ってたら面白いかなって思うような、ちょっと可愛い曲を選びました。アニメの「極上生徒会」が私のオタクのきっかけなので、(主題歌の)「恋せよ女の子」をカバーさせていただいて。声優オタクとして、「さよなら絶望先生」で新谷良子さんにたどり着き、「ハリケーンミキサー」という曲を知って好きになったので、歌わせていただきました。


──ファンは、樋口さんの「極上生徒会」への強い愛情を知っているので、ついに主題歌がミニアルバムに収録されたかという感覚だと思います。

樋口 「恋すな」って曲があるのに、「恋せよ」って曲が入ってるのも面白いなと思って(笑)。


──そのどちらも樋口さんということですね。「ハリケーンミキサー」は、新谷良子さんの曲の中でも特に好きな曲なのですか?

樋口 「CANDY☆POP☆SWEET☆HEART」も可愛くて好きなんですけど、わりと恋の歌で、恋の歌は「恋せよ女の子」でも歌ってるし、女の子の内面が出ている感じの「ハリケーンミキサー」の方が、樋口楓に合ってるんじゃないかなと思いました。


みんなにもいろんな音楽の楽しさを知ってもらいたい

──メジャー活動3年目のスタートで、樋口さんの好きが詰まった名刺代わりになるようなミニアルバムをリリースされるわけですが。この名刺を携えて進んでいく、この先の音楽活動に関して、2ndシングルでかなえた「アニメのタイアップ」という目標に変わるような新たな目標や夢などがあれば教えてください。

樋口 今は、そんなに明確な目標みたいなものはないので、当面は、やりたいことを探す期間にしようかなと思っていたんです。アニメのタイアップは、ものすごく大きなことなので、かなった瞬間に「これを越すことなんてないだろう」と思っちゃったので。でも、今回、このミニアルバムの制作をするにあたって、自分の好きな曲を目一杯、細かいところまでこだわりながら作らせていただいて。それがすごく楽しかったので、改めて、音楽をつくる楽しさを知る機会になりました。

このアルバムがいろんなファンの方たちに、どう響くかは、リリースされてみないと分からないんですけど、自信を持って「好きだ」と言える曲が作れたので、もっと樋口楓らしさを出していいんだとますます思えたんです。VTuberだから壁を壊す曲を歌わなきゃいけないとか、樋口楓だからネガティブな曲を歌わなければいけないとかは、考えなくてもいいんだなって。あくまで音楽が好きな樋口楓として、今後は、もっともっと幅広い曲を作っていきたいなと改めて思いました。

以前は、大きなところでライブしたいとか、誰々とコラボしたいといった貪欲な気持ちもあったんですけど。今は、曲を作る楽しさを知ったフェイズなので、みんなにもいろんな音楽の楽しさを知ってもらいたいな、という気持ちの方が強いです。


──これまでも新しい作品をリリースするときは、どんな反応があるか気になっていたと思うのですが、今回のミニアルバムは、これまでとは違うドキドキもあるのでは?

樋口 たしかに、「樋口楓の好きな音楽」に尖り過ぎているミニアルバムなので、そもそも受け入れてもらえるのかなという気持ちはあります。でも、最初から全員が全員に6曲すべてを好きになって欲しいということを思いながら作ってはいなくて。樋口楓の聴いてきた音楽や音楽のジャンルを知ってもらいたいとか、樋口楓の音楽歴を知ってもらいたいという思いがあるので。

そうやって、樋口楓の感性を知ってもらった上で、またタイアップだったり、ライブだったりに繋がっていければ、樋口楓の音楽活動として、もっともっと実りの有る大きな成果に繋がっていくんじゃないかなって。今はとにかく「好き」を発信して、誰かに響いて、何かに繋がればいいなと思っています。


●樋口楓 メジャー1stミニアルバム「i^x=K」
・発売日:5月25日(水)
・通常盤(樋口盤): 2530円(税込)
・初回限定盤A(𝓚𝓪𝓮𝓭𝓮盤):3300円(税込)
・初回限定盤B( ح゙ʒ~ƕ盤):3300円(税込) 

*収録曲(共通)
M1 あああああ(読み:あ~あ)
作詞:樋口楓 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
M2 ジブンなジブン
作詞・作曲・編曲:佐伯youthk
M3 怠ッセイ!怠ッセイ!
作詞・作曲・編曲:YASUHIRO(康寛)
M4 GODDESS
作詞:ジョー・力一 作曲・編曲:森本練/芳賀政哉
M5 イロドレ・ファッショニスタ
作詞:安藤紗々 作曲:永塚健登 編曲:PandaBoY
M6 恋すな
作詞:浜野謙太 作曲:浜野謙太/ 橋本剛秀 編曲:在日ファンク

*カバー
MA-M7 COLORS *初回限定𝓚𝓪𝓮𝓭𝓮盤のみ
MA-M8 GATEⅡ~世界を超えて~ *初回限定𝓚𝓪𝓮𝓭𝓮盤のみ
MB-M7 ハリケーンミキサー *初回限定ح ゙ʒ~ƕ盤のみ
MB-M8 恋せよ女の子 *初回限定ح ゙ʒ~ƕ盤のみ

(Text by Daisuke Marumoto

 
●関連リンク
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