「ユーザーローカルWebcam VTuber」サクッとレビュー シンプルで軽いアバター操作アプリ

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「パソコンとWebカメラだけですぐにVTuberになれる」とのうたい文句で登場し、今ちょっとした話題になっている「ユーザーローカルWebcam VTuber」(以下、Webcam VTuber)。Webブラウザー上で動作するアバター操作アプリケーションだ(関連記事)。

●Webcam Tuber https://vtuber.userlocal.jp/

3Dアバターを操作するためのアプリケーションは数多く存在する。大多数はPCやスマートフォン用のアプリだが、直近ではWebアプリとして提供されるものも登場しつつある。Webcam VTuberもそのひとつで、特別なハードを必要とせず、無料で使えるハードルの低さが最大の魅力だ。

VTuber黎明期より「バーチャルYouTuberランキング」を運営してきたユーザーローカルが、こうした実践向けのツールを開発・公開したのは興味深い。何より、ツールとしての実力や使い勝手が気になる人も多いだろう。そこで本記事では、実際のWebcam VTuberの使用感について検証していく。

起動からアバター・背景設定まで

起動直後の画面

まずは起動直後から。Webcam VTubeは、サイトにアクセスするだけで自動的に立ち上がり、Webブラウザーの画面いっぱいにインターフェースが表示される。デフォルトアバターのひとつが選択済みの状態で、サイトにアクセスした直後にWebカメラの読み込みが行われる。一定時間待てば、Webカメラを介したフェイストラッキングが有効になる。

画面の両端下部にはそれぞれコントロールメニューが表示されている。左側のフェイスアイコンはアバターの表情の切り替え、右側の各種ツールでヘルプ表示、背景とアバター変更、使用Webカメラ変更、そしてアバターのズームイン・ズームアウトが行える。「✕」マークを押せばメニューが非表示となり、カーソルをメニューがあった位置に近づけると対応する再度表示される。

アバター選択・アップロードメニュー

デフォルトで用意されているアバターは女性タイプ3体、男性タイプ2体の全5体。このほか、自前で用意したVRM形式のアバターを読み込むことが可能だ。使用できるアバターの最大サイズは100MB。

筆者アバターへ切り替えた様子

筆者のVRoid製アバターを読み込んだ状態がこちら。アバターのアップロードには少し時間がかかり、その間ローディングアニメーションなどは表示されないため、少々不安になった。しばらく待つと無事に読み込まれ、一度読み込めば再度起動した際もそのまま使用できる。

背景画像変更・アップロードメニュー

背景画像もいくつか用意されている。使用頻度が多いであろうグリーンバックも最初から存在する。

アップロードした背景画像に変更した様子

こちらもアバターと同様に、自分好みの画像アップロードし、変更することが可能だ(最大5MB)。

特徴的な機能について

表情切り替えの一例

各操作にはショートカットキーが設定されている。ひとつは表情切り替えだ。「1」~「5」までの数字キーに、それぞれ順に「NEUTRAL(標準)」「FUN(楽しい)」「JOY(喜び)」「SORROW(悲しい)」「ANGRY(怒り)」が割り当てられており、左側のメニューを操作しなくとも表情を切り替えられる。感情表現が豊かになる、アバター操作アプリケーションとしてはまず欲しい機能が備わっているのはうれしいところだ。

ズームイン・ズームアウトの一例

もうひとつはズームイン・ズームアウト機能。ズームインは「I」キー、ズームアウトは「O」キーに割り当てられており、ワンボタンで自由にアバターの距離を調整できる。全4段階の距離設定が用意されており、全身を表示する距離から、いわゆる「ガチ恋距離」まで設定可能だ。

そしてこの種のサービスとしては画期的な点のひとつが、Webカメラだけで上半身のトラッキングができること。手を振ったり、ピースサインを作ったり、表情だけでは表現できない感情を表現することも可能だ。

上発信トラッキング(両腕)

トラッキング精度はまずまずといったところ。片腕だけならばある程度正確にトラッキングするものの、両腕を動かすと捕捉制度が落ちる。また、細かい動きは検知しにくく、基本的には大きめの動きを反映する用途が主になるだろう。とはいえ、本来上半身のトラッキングは「Leap Motion」といった専用デバイスが追加で必要になるものであり、Webカメラ単独で、しかも無料でこのレベルを実現しているのは評価できる。

どこでも手軽にアバターを利用できるツールとして

使ってみてまず気づくのは、動作の軽さだろう。重くなるタイミングは初期起動とアバター切り替え程度で、それ以外はWebブラウザーのタブで複数Webページを開いたりしている状態でも、比較的軽快に動作する。運用面におけるメリットといえるだろう。

操作体系がかなりシンプルなのも、特に初心者にはうれしいところだ。ユーザーに要求される操作は、アバターと背景を設定し、動作させながら適宜表情と距離を変更するだけ。複雑な設定項目はバッサリ削ぎ落とされ、UIもシンプルにまとまっているため扱いやすい。その半面、細かい調整は利きにくくなっており、レイアウトや映像の質にこだわりたい人は物足りなさを感じるかもしれない。

機能と使い勝手を総合して、ライトユーザー向け、あるいは制限のある環境向けの選択肢といえる。軽さを求めるときはもちろん、「VRoid Studio」などで作ったVRMアバターをとりあえず動かしてみたいときや、出先でササッとアバターを動かすデモンストレーションを見せたい場面などでも重宝しそうだ。同じくWebブラウザーで動作するアバター操作アプリケーションとして「Kalidoface 3D」があるが、あちらは高画質・多機能な一方、動作はやや重い。軽快な動作か、リッチな表現か、用途に応じた使い分けとなるだろう。「手軽にWebブラウザーでアバターを動かす」手段として、今後幅広いユーザーに利用されることを期待したい。

(TEXT by 浅田カズラ

●関連リンク
ユーザーローカルWebcam VTuber
株式会社ユーザーローカル