VRアイドルえのぐの武者修行ライブ 「enogu 10 Days Live – 遮二無二 -」前半5日間を一挙レポート!

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2018年3月の結成以来、「世界一のVRアイドル」を目標に掲げて、鈴木あんずさん、白藤環さん、日向奈央さん、夏目ハルさんの4人組で活動しているVRアイドル「えのぐ」が、7月25日(日)から8月5日(木)まで「enogu 10 Days Live – 遮二無二 –」を開催中だ(チケット販売サイト)。

メンバーの総合的なライブパフォーマンス向上を目的とした武者修業ライブで、各公演ごとに異なるテーマを設定。10日間の公演すべてを異なるセットリストで実施していく。

入念な新型コロナウイルス感染予防対策を実施し、渋谷WWW Xで開催中の10Daysライブは、全公演、アフタートークも含めて配信でも視聴可能。初日と最終日に関しては、えのぐのYouTubeチャンネルで全編無料配信される(2~9日目はニコニコ生放送で有料配信。冒頭3曲は無料で視聴可能)。

ここでは7月25日(日)~7月29日(木)に開催された前半5公演をダイジェストでレポートしていこう。基本は配信で視聴し、一部公演では現地で取材したが、ライブ写真は配信画面のスクリーンショットを使用している。


初日の10曲目で新曲「BRAVER」を初パフォーマンス

7月25日開催、「観た人、聴いた人の心が熱くなるような感情に訴えかける『遮二無二ライブ』」がテーマのDAY1は、自己紹介曲「e☆Jump!→Dream!!」で開幕。ポジション移動の連続で常に脚が止まることはなく、タイトル通りにジャンプも多い曲だが、もちろん全力のパフォーマンス。「本当に、このテンションで10日間を走り切るつもりか?」と心配になるほどだ。

「Armor Break」「絵空事」と3曲連続で歌った後、最初のMCで、白藤さんが10日間にわたるライブへの思いを語る。

「このライブを全日程やり遂げたときに、私たち自身が変わっていることはもちろん、観てくださってる皆さんにも「えのぐがこれだけ頑張ったのだから、俺も、私も、頑張ろう!」と思える勇気を与えられる10日間にしたいと思っています」

開幕から熱いDAY1だったが、クライマックスはラストの10曲目、「遮二無二」のテーマソングでもある新曲「BRAVER」の初パフォーマンスだ。「2021年高校野球 都道府県別大会テーマソング」にも選ばれており、一部地域のニュース速報や高校野球中継などではすでに放送されていたものの、ライブではこの日が初披露となった。

鈴木さんのソロから始まる王道の青春ソングで、勢いや熱さ以上に、しっかりと一歩一歩、大地を踏みしめるような強さを感じる楽曲だ。結成3周年を迎え、高校球児よりも少しだけお姉さん(メンバー全員が去年、高校を卒業)な今のえのぐだからこそ、より強い説得力を持って歌える応援歌だと感じた。

終演後、ステージを去ったメンバーは、普通のライブのアンコールまでの時間よりも早くステージに復帰。その日の公演を振り返るアフタートークがはじまった。アフタートークは、初日だけでなく全日程で開催。ライブの裏話などトークの内容はもちろん、ライブの熱気も冷めやらぬテンションのまま仲良く話す4人の姿を観るのも楽しい。


テーマに沿ってメンバーのパフォーマンスも変化

7月26日、Day2のテーマは、「かわいい全振りライブ」。「かわいさ」と「熱さ」を兼ね備えていることはえのぐの大きな魅力だが、あえて「かわいい」に特化するという武者修行らしいステージだった。

1曲目の「Original Color Girls!!!!」は、ファンなら誰もがDay2のセットリストに入ることを予想できるくらい曲も詞もキュートな楽曲。しかし、驚いたのは4人のパフォーマンス。歌い方やダンスでも明らかに「かわいさ」が増しているのだ。間奏では、鈴木さんと日向さんが手で大きなハートを作ったりという、これまでのライブでは観られなかった動きも。「かわいい全振りライブ」とは「かわいい曲が中心のセットリストのライブ」だと解釈していただけに、テーマに沿ってパフォーマンスの変化も楽しめるのは、嬉しい驚きだった。

最も顕著な変化があったのは、5曲目のクリスマスソング「Present for you!」。イントロや間奏のセリフパートで、鈴木さんがお母さん、白藤さんが幼い女の子を演じる「あんたま親子」のやり取りが人気だが、この日は鈴木さんも幼い女の子に。姉妹のような「あんたま」のかわいいやりとりには、「こういうかわいいでも攻めてくるのか」と感心させられた。

また、この日は、大塚愛さんの名曲「さくらんぼ」をカバー。4人ならではのますます元気でかわいさを披露した。

この日のラストも新曲の「BRAVER」。この曲はかわいい全振りではなく、前日の初披露時と同じか、それ以上に力強いパフォーマンスに感じた。2日目にして、この曲だけは日替わりテーマ対象外の曲として、毎公演、歌われていくであろうことがわかった。


「TOKYO IDOL FESTIVAL 2021」出演決定に歓喜!

7月27日、Day3のテーマは、「真夏の!えのぐアニソンっぽい曲祭り!」。アニソンのようなキャッチーさがある曲で構成されたライブということだったが、えのぐの持ち曲の大半はその条件に該当。前半5日間の中では最もセトリ予想の難しいライブだった。

1曲ごとに配信のコメント欄も「これはオープニング」「エンディング来た!」などと盛り上がっていく。また、前日は「かわいさ全振り」というテーマに沿って、メンバーのパフォーマンスも変化していたが、この日は、いい意味でいつものえのぐらしいストレートに全力のパフォーマンスだった。

1曲目の「Welcome to Live」は、タイトルどおりライブの開幕にぴったりの華のある楽曲で、アニメのオープニングテーマだとしてもまったく違和感がない。

5曲目の「Magic」は、日向さんの伸びやかなボーカルから始まるサビが印象的なバラード。歌声を聴きながら、止め絵のカットがゆっくりと流れていくようなエンディング映像が脳内で再生された。

この日は、ライブパフォーマンス以外でも、メンバーとファンが大きく盛り上がる一幕があった。開演の直前に、世界最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL 2021」(「TIF 2021」)への出演決定が発表されたのだ。

2019年にバーチャル勢として初めて「TIF」への出演を果たし、昨年は「TIF2020」の代わりに開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL オンライン 2020」の「バーチャルTIF」に出演したえのぐ。今年は「TIF」と「バーチャルTIF」の両方への出演を目標としていたが、まずは「TIF」への出演が決定。MCで改めてファンに報告した後、大喜びでステージを走り回る白藤さん、日向さん、夏目さんと、そんな3人の真ん中でクルクルと回っている鈴木さんが微笑ましかった。

当時、休養中で「TIF2019」に参加できなかった夏目さんにとっては初めての「TIF」で、「本当にガチで嬉しい」と力強く語る姿も印象的だ。


大先輩アイドルのヒット曲をカバー!

7月28日開催、「王道アイドル楽曲で構成された『えのぐSummer Festival』」がテーマのDay4は、まさに王道アイドルソングという「ハートのペンキ」で開演。

2曲目は、アイドルソングとしては変化球気味だが絶対に盛り上がる「It’s 笑 time!」。3曲目は「かわいさ全振り」公演でも披露された鈴木さんと夏目さんのユニット曲「午前0時のプリンセス」。最初の3曲だけでも、バラエティに満ちたアイドルとしての魅力を見せてくる。

終始ハイテンションだったMCを挟んだ4曲目では、4人にとってはアイドルの大先輩であるモーニング娘。のヒット曲「ハッピーサマーウェディング」をカバー。筆者はおおいに懐かしさを感じたが、終演後、この曲が発表された2000年には、えのぐのメンバーは誰も生まれてなかったという事実に気づき愕然とした。

この日は配信で取材していた筆者が「現地で聴きたかった」と最も後悔したのは、9曲目「YeLL for Dear」のラストでの鈴木さんの絶叫。

「VRアイドルがアイドルの王道と呼ばれる存在になる未来を目指して。これからも頑張ります! 『TIF』のトリで出演するようなアイドルになるぞー!」

他のメンバーも、もちろんとばかりに「おー!」と絶叫する。

その熱い思いが歌声に宿ったのか、10曲目の冒頭、鈴木さんのソロはこれまででいちばん力強く熱い「BRAVER」となった。「Day1」での初披露以降、日に日に変化していく「遮二無二」のテーマソングは、10日間の武者修行の後、どんな曲に仕上がっているのだろうか。

 
バラードの中心のセトリで歌唱力に全振り

7月29日実施、前半戦最終日の「Day5」のテーマは、しっとりと歌い上げる楽曲のみで構成した「歌唱全振りライブ」。美しいメロディーで聴かせる持ち曲が多いだけでなく、メンバーの歌唱力に自信がなければ掲げることのできない課題だろう。

3曲目で秦基博さんの「ひまわりの約束」、6曲目ではMr.Childrenの「HANABI」をカバー。高い歌唱力で知られるボーカリストのバラード2曲を歌うことは、アイドルのライブとしては、かなり挑戦的セトリだった。ダンスもおとなしめの静かな公演ではあったが、武者修行感は非常に強かった。

「歌とダンスでえのぐを引っ張る」という宣言どおり、高音まで伸びやかな歌声で難易度高めな課題曲のサビも歌いきった日向さん。えのぐの大黒柱らしく、表現力あふれるボーカルでもライブを支える鈴木さん。普段はライブでのハモりを一手に担いつつ、ユニゾンやソロのパートでは持ち前の明るく華のある歌声を響かせる夏目さん。

魂を込めた「パッション全開」のパワーボーカルが魅力の白藤さんは、バラード中心のセトリでも安定した歌声で存在感を発揮し、新たな一面を見せる。「歌唱力全振り」のライブだからこそ、4人のボーカルの特徴やクオリティを改めて感じることができた。

8曲目では「Present for you」のピアノバージョンを初披露。メンバーの歌声の美しさがさらに際立つパフォーマンスを観ながら、アコースティックミニライブなども楽しそうだなと夢想した。

しっとりしたライブ本編とは違い、いつも通りに元気なアフタートークでは、「HANABI」のサビでハモりに挑戦した日向さんが、一緒にハモりを担当した夏目さんと一緒に練習の大変さや本番での緊張ぶりを振り返った。この先、鈴木さんと白藤さんがハモりを披露する公演もあるそうだ。

「遮二無二」の前半戦の振り返りでは、「どの公演が一番良かった?」と質問し、ファンが迷いながら一つの公演を選んだのに対し、えのぐの4人は全員「一つは選べない」というずるい答え。最後には、後半戦に向けての意気込みを1人ずつ語り、10daysライブ前半戦を締めくくった。

「世界一のVRアイドルになる」という大きな目標に向けて、メンバー全員が殻を破って、さらに大きく飛躍するための武者修行ライブ。「ライブでは常に最高を更新していく」ことをモットーとしているえのぐは、8月1日から始まっている後半の5公演で、どのような「最高」を見せ続けてくれるのか?
全公演終了後、改めてレポートしたい。

後半に続く

 
(TEXT by 丸本大輔

 
 
●関連リンク
「遮二無二」公式サイト(当日券も販売中)
「遮二無二」ニコニコ生放送
えのぐ(YouTube)