【データで見る、ツイ伸び新人VTuber】2021年1月第4週は、おだのぶ、肉赤子ちゃん、ミツルギリア

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企業・個人を問わず、毎日何十人もの新人がデビューしていくVTuberの世界。一方、すでに業界内には多くの才能が存在しているため、今の「推し」の動画・配信を追うだけで精一杯、新人まで気が回らないというVTuberファンも多いはず。そんな方に向けて送るのが本連載「データで見る、ツイ伸び新人VTuber」です。

分析・執筆は、Twitterのリストから随時2万人以上のVTuberのデータを収集して分析しているmyrmecoleonさんが担当。直近の7日間でTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを数名紹介します。


こんにちは。myrmecoleonと申します。今回も最近勢いのあるVTuberを紹介していきます。以下は直近にTwitterのフォロワー数が急増したVTuberを並べたグラフです。今回はここから、いずれもフォロワーが20%以上増加したおだのぶさん、肉赤子(にくあかご)ちゃんミツルギリアさんの3名をピックアップ。伸びた原因も推測しつつ、プロフィールをまとめました。


VTuberリスト登録のTwitterアカウントから、2021年1月18日13時から25日13時にフォロワー数が5%以上増加したうちのフォロワー数増加上位。記事で取り上げたアカウントの棒グラフはオレンジ色に変えた。肉赤子ちゃんとミツルギリアは順位通りでないがピックアップの関係で追加。


おだのぶ

初投稿よりスクリーンショット

おだのぶさんは2018年4月に初投稿の個人VTuber。動画中心に配信も行う活動をしており、織田信長の肖像に似たデザインに一人称「わいぴょん」や、独特な企画などでVTuberのコミュニティで初期から親しまれているVTuberのひとりです。過去の企画で送ったおだのぶさんのキスボイスがきっかけで結成された「おだのぶキス部」も有名です。

おだのぶさんは今回の7日間で3600名以上・21%のフォロワーを増やしています。この伸びのきっかけは1月24日に開催された「VTuber最協決定戦 ver.APEX LEGENDS Season 2」(本戦本配信)。「VTuber最協決定戦」は渋谷ハルさん主催のVTuber限定のゲーム大会で、2018年から「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」の大会としてスタート、2020年8月より「APEX LEGENDS」を舞台に再スタートし,今回がAPEXでの第2回となります。

おだのぶさんは紗樹万咲さん、にじさんじのさんとともに「ディープキス部」として大会に参加。開催前の連日のカスタム練習を配信し、本番では最終戦でチャンピオンを獲得して号泣するさまが話題となっており、これが今回の注目の原因と思われます。また「ディープキス部」は全体としても4位という高い成績を達成しました。

おだのぶさんはVTuber最協決定戦に第1回以来ほぼ毎回参加していましたが、バラエティ寄りの動きが多く、こうした勝利とはあまり縁のない印象がありました。しかし今回はチームに叶さんを迎え、コーチの指導の下で本格的にAPEXを練習して大会に望みました。今までのおだのぶさんと今回に向けての配信での練習を見てきたからこそ、視聴者も他の参加者もおだのぶさんのチャンピオンを話題にし、注目されたものと思います。

この7日間に増加したフォロワーの傾向(該当アカウント群から300名超を無作為抽出の上フォローしているアカウントを集計。以下同じ)を見ると、チームメイトの叶さんほか、葛葉さん、勇気ちひろさん、イブラヒムさん、星川サラさん、不破湊さんなど、にじさんじを中心に大会参加者のフォロワーが8割ほどと多いようです。大会で叶さんのチームメイトとして活躍する姿から、にじさんじのファン層からのフォローが増えたという動きのようです。VTuber以外では有名なAPEXプレイヤーのRasさんやカワセさんをフォローしてる方も見えました。

今回のVTuber最協決定戦ではおだのぶさん以外も参加したVTuber全体が注目を集めており、上のグラフでも主催の渋谷ハルさん、最多キルの久檻夜くぅさんほか、イブラヒムさん、一ノ瀬うるはさん、花芽すみれさん、胡桃のあさん、白雪レイドさん、小森めとさんと大会参加者の名前が見えます。VTuber最協決定戦のような大会が広くVTuberに注目を集める役割を果たすのがよく分かります。こうした大会で結果を出すことは特に個人や小規模な団体のVTuberにとって大きなチャンスと言えるでしょう。


肉赤子ちゃん

自己紹介動画よりスクリーンショット

肉赤子ちゃんは2018年9月に初投稿の個人VTuber。VTuberといっても、謎の生物「肉赤子ちゃん」にまつわる出来事を非常に個性的な動画で投稿するという形式の活動で、動画では肉姉さんや肉諧謔などの肉赤子ちゃんの仲間、魚頭の博士などが登場しています。一方でTwitterでの活動も活発で、また他のVTuberとのコラボ等ではライブ配信に参加することもあります。

今回の7日間ではフォロワーが1400名以上増えて、ほぼ倍増となりました。要因としては1月17日にTwitterに投稿した以下のマンガが挙げられます。これまで意味不明に思えた肉赤子ちゃんの一連の動画の前日談が描かれており、動画と合わせて改めて話題となりました。YouTubeにもこれに関連した動画が新たに投稿されています。

7日間の新規フォロワーの傾向を見ると以前からVTuberをフォローしていたアカウントは比較的少なく、多いところで1/4程度がにじさんじの月ノ美兎さんや御伽原江良さんをフォローしているようです。彼らがよくフォローしていたアカウントとしては漫画家のしろまんたさんや八木戸マトさん、一智和智さんなどで、VTuberというよりTwitterの漫画家の枠組みでフォローされた傾向が読み取れます。

いまではVTuberといえば配信中心に見られることが多いですが、自分の世界を持つクリエイターとしての活動をしているVTuberも多く、そうしたVTuberがこうしたかたちでバズることもあるという好例と言えます。


ミツルギリア

自己紹介動画よりスクリーンショット

ミツルギリアさんはWACTOR所属の未来人の新人VTuber。2019年12月にデビューし、歌やASMR、ゲーム実況などの配信を中心に活動しています。特技は歌で、自己紹介のオリジナル曲や歌ってみたなどの動画を投稿。活動1周年となる2020年12月には3Dモデルのお披露目もしました。キャラクターデザインはWACTORの先輩であるヒヅキミウさんと同じく竹花ノートさんです。

今回の7日間では880名以上、以前の23%となるフォロワーが増加。YouTubeのチャンネル登録数も2万2100名と大幅に増加しました。この要因としては1月19日に投稿したスペイン語での自己紹介動画が挙げられます。翌日にはスペイン語話者向けのライブ配信も行っており、南米を中心とした海外リスナー(南米の多くの国はスペイン語を公用語としています)が多数チャットに参加しました。

これについては、先行してWACTORの先輩であるヒヅキミウさんが1月17日にスペイン語での自己紹介動画を投稿しており、これに続いたものと思われます。1月25日には同じくツキトハナさんも投稿、いずれも同様にスペイン語話者向けの配信をはじめています。なお自己紹介動画はすべてスペイン語ですが、彼女らもまだスペイン語は勉強中で、配信ではスペイン語を混ぜつつも日本語です。ヒヅキミウさんはミツルギリアさんと同様にTwitter・YouTubeとも同様に今回よく伸びています。

WACTORは日中に展開するVTuber事務所で、中国のbilibiliでの配信もよくしており、国内でも海外展開に意識のあるVTuber事務所の一つです。今後は南米リスナーをターゲットとしたスペイン語での展開も進めていく方針なのかもしれません。実施のきっかけは分かりませんが、これ以前からスペイン語話者のリスナーもしばしばヒヅキミウさんなどの配信に訪れていた様子があり、そのためでしょうか。

7日間の彼女の新規フォロワーの傾向を見ると、彼らの半数ほどはホロライブEnglishのGawr GuraさんやWatson Ameliaさん、海外での人気が高い戌神ころねさんなどのフォロワーのようです。先行してスペイン語での活動を始めたヒヅキミウさん経由のフォローも目立ちます。スペインの有名YouTuberのelrubiusさんやAuronさん、南米やスペインのVTuberのSuwieさんやNimuさん、Noriさん、Necomiさんなどのフォロワーも見え、ホロライブの英語圏での人気からVTuberに関心を持ったスペイン語話者がヒヅキミウさんやミツルギリアさんに注目した動きが読み取れます。

2020年のホロライブなど英語圏でのVTuberの人気を背景に、現在ではアジア以外の非英語圏でもVTuberは関心を持たれるようになってきています。彼らはたとえ拙くても自分たちの言語でやり取りしてくれるVTuberを求めており、そうした層に戦略的にアプローチしていく動きもすでに日本国内で始まっているようです。


(TEXT by myrmecoleon

 
●関連リンク
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