「ぶいちゅっばの歌」合唱の大団円に感涙 ななしふぇす第4部「ハニストとどぅーいっと!」レポート

LINEで送る
Pocket

人気グループ「有閑喫茶あにまーれ」「ハニーストラップ」「ブイアパ」「シュガーリリック」を擁するVTuber事務所「774inc.」は12月19日、初めての全体イベント「ななしふぇす どぅーいっと!」を開催した。

個性豊かな20名のVTuberが出演したオンライン音楽フェスは、各グループがメインを務める四つのパートに分かれて行われ、全員出演の「グランドオープニング」と「グランドエンディング」を含めた公演時間は8時間30分以上(パート間の休憩を含む)。単独のVTuber事務所による音楽ライブとしては、最大規模のイベントとなった。

ここでは、「ハニーストラップ」の周防パトラさん、西園寺メアリさん、島村シャルロットさん、堰代ミコさんに加えて、シャッフルユニットメンバーである「あにまーれ」の柚原いづみさん、「ブイアパ」の杏戸ゆげさん&不磨わっとさん、「シュガーリリック」の龍ヶ崎リンさんも出演した第4部「ハニストとどぅーいっと!」と、「グランドフィナーレ」の模様をレポートする。


「ハニスト」オリジナルのクリスマスソングで開幕

開演時間となり、カメラが複数の円形ステージの浮かぶ無人のバーチャル空間を映す中、音声のみでハニストメンバーのトークが始まる。ハニストの仲良しぶりに盛り上がるコメント欄をあおって、さらに盛り上げた後、センターのステージに白い制服姿の4人が登場。パトラさん作詞作曲のクリスマスソング「HoneyChristmas」を披露すると、ライブ空間にも雪が舞い、いきなりクリスマスムード全開。ステージの中心で輪になって歌い踊る四人からも、「楽しい」という感情がどんどん伝わってくる。

歌い終えた後は、一列に並び「ハニストとどぅーいっと!」と叫びながら決めポーズをするが、ポーズは全員バラバラ。カメラのフレーム内から身体の一部が外れてしまったミコさんが、カニ歩きのような動きで仲間に近付いていく様子も可愛らしい。

MCでは、「HoneyChristmas」を歌うのは、2019年12月に開催されたイベント「Honey Feast 2杯目 – おかえりなさい!靴はそろえて上がってね」以来、ちょうど1年ぶりで、このイベント用に振り付けが少しアレンジされていることなどを語る。そして、先ほどの「ハニストとどぅーいっと!」の決めポーズはアドリブだったことが明かされると、ミコさんのリクエストでリベンジすることに。今度は、パトラさんとメアリさんのポーズが被ってしまったが、シャルロットさんが「仲がいいってことよ」とフォローした。

次の曲を歌うメアリさんだけをステージに残して他の3人は退場。黒い通常制服に着替えたメアリさんが、「みんなのテンションをぶち上げる。メアリと言えばのあの曲を歌っちゃうからね」と宣言すると、サンバのリズムの特徴的なイントロが流れ出し、「さあ~歌って踊って騒いで~」というあおりに続けて、パトラさん作曲、メアリさん作詞のオリジナルソング「メアリサンバ」を陽気に歌っていく。メアリさん自身がまるで「よっぱっぱ」なのかと思うほどハイテンションなパフォーマンスで、ソロコーナーの1曲目から、ライブの空気はおおいに暖まった。

メアリさんと入れ替わる形でステージに登場したシャルロットさんは、作詞のパトラさんと作曲の音猫ななしさんに「リスナーさんとシャルの関係や思い出」を曲にしてもらったというオリジナルソング「トリミングアイランド」を披露。悪魔の女王でありながら、その容姿やピュアな言動から「天使」と呼ばれてしまうことも多いシャルロットさん。白い制服を着て、澄んだ歌声を響かせながらステージ上で舞う姿や、最後に「いつもありがと」と言った時の笑顔を観ていると、やはり天使だったのだなと自分の中では結論が出た。


大舞台で「かにプの歌」や「よっぱっぱの歌」も披露

ソロコーナー3人目のミコさんは、元気に片手を挙げたポーズで登場。ミコさん独特の繊細かつ美しい歌声で、パトラさんが作詞、作曲を担当したオリジナルソング「ミドリなリンゴ」を歌った。円形ステージを広く使ったパフォーマンスに目を惹きつけられたまま、ミコさんの歌声を聴いていると、いつの間にかミコさんの少し不思議な世界観に没入。なぜか涙腺が刺激されていた。また、繊細さを保ったまま、サビでは力強さを増して響いていく歌声はボーカリストとしての能力の高さを証明していた。

まるで短いお芝居のようなミコさんのパフォーマンスの余韻を一瞬で打ち消したのは、「こんばんわんわんーパトラだよー」というオンリーワンのキュートな声と、センターステージに立つ巨大なマスコット「かにカマ」の存在感。その周囲には、「かにプ」の文字が大量に書かれている。次の曲は、パトラさんの大好きな「かにプ(かにかま+プリン)」をテーマに作った「かにプのうた」だ。一度聴いたらクセになるリズムとフレーズで脳内を侵蝕してくる電波曲で、サビでの片足と両手を後ろに伸ばす振り付けも可愛らしい。ラスサビでは、シャルロットさんとミコさんもバックダンサーとして登場。このライブならではの豪華なパフォーマンスだった。

続いてはシャッフルユニットのコーナー。1組目として登場したのは、メアリさん、「あにまーれ」の柚原いづみさん、「ブイアパ」の不磨わっとさん。10月に「だらっと女子飲み」という名の飲酒コラボ配信をした三人は、「いいんだよ、みんな。お酒飲んでも」とリスナーを酔わせようと誘惑した後、メアリさんのもう一つのオリジナルソング「よっぱっぱの歌」を披露した。酔っ払ったメアリさんが即興で歌った曲をパトラさんが編曲したこの歌を呑み仲間やリスナーと歌えることが嬉しくて、歌う前からずっとハイテンションなメアリさん。間違いなく素面のはずだが、あまりに楽しそうな様子に、本当に素面なのかと疑ってしまった。ラストには、「お酒さいこー!」というメアリさんの魂の叫びが響く。

センターステージ上空のステージに並んでいたパトラさん、ミコさん、「ブイアパ」の杏戸さん、「シュガーリリック」のリンさんが歌うのは、気志團のメジャーデビュー曲で、カラオケでも盛り上げ曲として人気の「One Night Carnival」。パラパラ風の動きが特徴的な振り付けもしっかりコピー。また、冒頭や曲中にあるセリフ部分の内容は、「パトラんとこ来ないか?」「とにかくもう、774inc.以外、俺達は考えられなかった」など、「ななしふぇす」バージョンに変えられているのも楽しい。最初から最後まで全力でカッコつけているのに、どこかコミカルさが漂い続けるのは、楽曲の力か、演者の個性か。


第4部ラストはオリジナル曲「キラメキスプリンクル」

シャッフルユニットコーナーに続いては、「ハニスト」メンバーのデュエット曲。まず、メアリさんと、シャルロットさんが歌ったのは、可愛い片思いをテーマにした人気ボカロ曲「おじゃま虫」。「好き」や「『好き』って言って」という歌詞が頻出するラブソングで、特に、カメラに超接近して交互に「好き」「超好き」と語りかけてくるパートは、二人のファンにとって、ご褒美のような選曲だったはず。ラストの「にゃあ」も可愛い。

2人のパフォーマンスを別のステージから観ていたパトラさんとミコさんも、「可愛い」「てぇてぇ」と大絶賛。「パトラもミコとてぇてぇしたい」とパトラさんがねだると、「てぇてぇと言えば、戦争」とミコさんは可愛くファイティングポーズ。パトラさんが驚いて固まる中、兄弟ゲンカを描いた「おこちゃま戦争」のイントロが流れ出す。二人は、テンポの良い掛け合いが楽しいボカロ曲を、可愛い振りとともに披露。おそらく、パトラさんの求めた「てぇてぇ」とは異なるが、観ている側は上質の「パトミコてぇてぇ」を堪能できた。

デュエットコーナーが終わり、再び集合した「ハニーストラップ」の四人。お互いのデュエット曲の感想を言い合う様子からも、全員の「ハニスト愛」が伝わってくる。そんないつも仲良しな四人が次に歌うのは、2020年7月にリリースされたオリジナルソング「Piece of Darkness」。ライブの約1週間前に秋葉原の街頭ビジョンで生中継された公開リハーサルでも歌った曲だ。静かなメロディと、サビ以外はほとんどソロパートという構成は、一人一人の歌声の個性をさらに際立たせる。

シリアスなステージの後でも、MCが始まると、すぐに賑やかになる四人。デュエット曲や「Piece of Darkness」に関する感想やエピソードだけではなく、第1~3部までを含めたシャッフルユニットとしての出演についての感想などでも大いに盛り上がっていた。

ここで「ななしふぇす どぅーいっと!」のレギュラー企画「774inc.のメンバーをどぅーいっと!せよ」の時間が到来。順番に、774inc.メンバーの名前が書かれたクジを引き、ものまねを披露。他の三人は、誰のまねをしているか当てるというゲームだ。しかし、メアリさんからの提案で、企画内容がバージョンアップ。クジを引いたメンバーは、別の一人にその結果を共有。その共有相手は、ものまねをするメンバーに、シチュエーションをリクエストできることになった。

まずはパトラさんがクジを引き、その結果をミコさんに共有。クジの結果と、ミコさんのリクエストにより、パトラさんがまねしたのは「幼稚園の頃の堰代ミコ」。ロリ声で「お菓子しか食べない~」など好き嫌い全開の発言をするパトラさん。すると、ミコさんから「紙に書かれていた方は幼稚園の頃は言葉がほとんど発せられず。周りとのコミュニケーションが今以上に取れなかったんです」という演技指導が入る。ものまねの対象がミコさんとは知らないメアリさんとシャルロットさんは、謎の展開に困惑していたが。結局、メアリさんが答えを的中した。

その後もメアリさん、ミコさん、シャルロットさんの順番でものまねを披露。メアリさんの「オムライスを作る杏戸ゆげ」は、なかなか正解者がでなかったが、ミコさんの「借金取りに終われる不磨わっと」と、シャルロットさんの「サインをもらう獅子王クリス」は披露した瞬間、メンバー全員が大笑い。正解を答えるまでもない状況となった。

バラエティコーナーで大笑いした後は、「ハニストでどぅーいっと!」最後の曲。再び白い制服姿に着替えた四人はオリジナルソング「キラメキスプリンクル」を歌う。同時リリースされた「Piece of Darkness」とは正反対のポップな楽曲で、「ハニスト、イエーイ!」のコールや振り付けも楽しく可愛い。このオンラインライブでもコメント欄を大いに盛り上げたが、いつかリアル会場のライブでも聴いてみたいと強く思う曲だ。

歌い終えると同時に、黒い制服に衣装を着替え、そのまま最後のMCを始める四人。一人ずつ順番に感想とメッセージを語っていく。最後のシャルロットさんのメッセージが終わると、「みんな近くに来てよ~」と他のメンバーを集めるパトラさん。みんなで肩を寄せ合いながら、カメラに向かって「今日はみんな観てくれてありがとう!」と感謝の思いを告げて、第4部「ハニストとどぅーいっと!」は終了。パトラさんが「最後は774inc.のみんなで歌いたいと思います。みんなー出てきてー」と叫ぶと、「あにまーれ」「ブイアパ」「シュガーリリック」のメンバーもグループごとに別のステージに登場。グランドフィナーレが始まった。


出演者全員の「ぶいちゅっばの歌」でグランドフィナーレ

最後の歌の前に、「ブイアパ」の杏戸ゆげさん、「あにまーれ」の因幡はねるさん、「シュガーリリック」の城ヶ崎リンさん、「ハニーストラップ」の周防パトラさんが順番にメッセージを語っていく。

杏戸「私、自分がデビューした時、こんなに大きなステージで、こんなに愉快な仲間たちと、こんなに楽しいライブができると思ったことなかった。私はすごい楽しかったので、観てくれたみんなも、そう思ってくれていたら嬉しいなと思います。今回、私が本当に良かったなと思うのは、みんなにこんなに楽しいステージを見せられたこと。それに、(「ブイアパ」メンバーの花奏)かのんちゃんは、今回、裏方ですごく頑張ってくれたんだけど。かのんちゃんが作ってくれた素敵な曲を、愉快な……素敵な仲間たちと一緒に、みんなに観せることができたことも一番嬉しい。これから「ブイアパ」も774inc.ももっともっと楽しい事を皆に見せていけると思えた日でもありました。774inc.のこと、これからも応援して欲しいです。今日は本当にありがとうございました!」

因幡「まずは、今日のイベントのためにたくさんご尽力頂いたスタッフの皆さん、そして、いつも応援してくださるファンの皆さん、本当にありがとうございました。『有閑喫茶あにまーれ』は、774inc.の中で一番最初にデビューしたグループなのですが。本当に波瀾万丈というか。たくさん、いろんなことがあって、リスナーさんには心配ばかりかけてきました。でも、今年に入って新メンバーもたくさん入ってくれて、今本当に賑やかな毎日を過ごさせていただいております。これからも『あにまーれ』は波瀾万丈なことがたくさんあると思いますが、みんな仲良く手を取り……合わないかなあ。(他のメンバーから「なんでよ!」「取ります!」とツッコミ)たまに仲良く手を取り合って、たまに仲良く喧嘩して頑張っていきますので、これからも末永く、私たちのことを見捨てずに応援してください。私たちが『あにまーれ』だー!」

リン「人間ども、本当に長い時間、僕たちのライブ、『ななしふぇす どぅーいっと!』を観てくれてありがとう! 僕たち『シュガーリリック』がデビューする前から774inc.にいる先輩の皆さんと、同期と、後輩のみんなと、こんなにでっかいステージで素敵なライブができて、本当に嬉しく思っています。僕たちがここに立っていられるのは、応援してくれるみんながいるから、みんなが僕たちに力をくれるからです。ありがとう。774inc.って『あにまーれ』と『ハニスト』と『ブイアパ』と『シュガーリリック』の四つのグループがあって、僕たちは一番最近デビューしたグループだけど、先輩たちの背中を見ているだけじゃなくて、これからももっとでっかくなっていこうと思っているから、『シュガリリ』と774inc.をよろしくお願いします」

パトラ「今日は本当に楽しい時間をありがとうございました。最初の頃は、『あにまーれ』と『ハニスト』だけで活動していたんだけれど。温かい仲間がたくさん集まってくれて、774inc.という大きなグループになることができました。そして、こんなに素敵なライブをすることができました! みんなでこれからも頑張っていくので、本当にどうかよろしくお願いします。今日は人生で一番素敵なライブになりました! 本当にありがとうございましたー! というわけで、『ななしふぇす どぅーいっと!』も次が最後の曲になります。最後はみんなで歌いましょう!」

「ななしふぇす どぅーいっと!」を締めくくる曲は、パトラさん作詞・作曲の「ぶいちゅっばの歌」。音楽クリエイターとしてのパトラさんの代表曲だが、VTuberをテーマにした楽曲で、774inc.にとどまらず、VTuber業界全体のアンセムにもなり得る名曲だ。また、出演メンバー全員にソロパートが割り当てられ、サビは全員で合唱するという歌割りに、「全員主役」というこのフェスのテーマが最後まで徹底していることを実感した。グループごとに分かれて四つのステージで歌っていた出演者たちは、ラスサビで中央のステージに集結。全員で輪になって合唱するという演出もクライマックス感を盛り上げた。最後は、全員で声を合わせて「ありがとうございました!」と感謝の言葉を告げて、「ななしふぇす どぅーいっと!」が幕を閉じた。

おそらく、これからも成長と拡大を続けていくあろう774inc.と、四つの所属グループ。今回以上にメンバーやグループが増えていくと、「全員主役」のフェスを実現することのハードルは、さらに高くなるはず。それでもやはり、第2回、第3回が実現することを期待せずにはいられない、そんなお祭りだった。

●セットリスト
M1.HoneyChristmas
M2.メアリサンバ
M3.トリミングアイランド
M4.ミドリなリンゴ
M5.かにプのうた
M6.よっぱっぱの歌
M7.One Night Carnival
M8.おじゃま虫
M9.おこちゃま戦争
M10.Piece of Darkness
M11.キラメキスプリンクル
M12.ぶいちゅっばの歌

●イベント概要
・イベント名:ななしふぇす どぅーいっと!
・開催日:12月19日
公式サイト

(TEXT by Daisuke Marumoto)

●関連リンク
「ななしふぇす どぅーいっと!」公式サイト
774.inc公式サイト