もう何も怖くない! VTuberも対象、文化庁「文化芸術活動の継続支援事業」で機材・活動費を支援してもらうには

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11月25日より始まった「文化庁令和2年度第2次補正予算事業文化芸術活動の継続支援事業」。平たく言えば芸術活動をしている人へ補助金を出してくれる制度だ。制度の目的を引用すると

「文化芸術活動の継続支援事業」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により活動自粛を余儀なくされた文化芸術関係団体等に対し、感染対策を行いつつ、直面する課題を克服し、活動の再開・継続に向けた積極的取組等に必要な経費を支援し、文化芸術の振興を図ることを目的としています。

と、活動の再開と継続に重点が置かれている。

実はこの文化芸術活動、VTuber活動も状況によっては対象となる。実際に対象となったことを公開していたVTuber・わたあめ子さんのインタビューを交えつつ、本制度の申し込み方を紹介したい。

筆者がこの記事を執筆しようと考えたのは、単純に良い制度だと思った部分もある。だが、それ以上に「VTuberのような新しい表現活動も、伝統的な芸術活動と等しく支援対象になりえる」ということを伝えたかったからだ。筆者自身も「Vオタ」として楽しい日々を送っているが、どきどき、活動している人の口から、家族や周囲の人に理解されにくい活動だという嘆きの言葉を聞いてしまうこともある。

そんな人達に伝えたい。国家予算のレベルで伝統芸能と並んで芸術活動として認められる(場合もある)のだから、卑屈な思いをしないでください! と。それが本稿を書こうと思った最大の目的でもある。

とはいえ、そんな筆者の個人的な思いよりも大事なのはその内容。しっかりとご紹介していきたい。


誰でも申し込める? 何が対象?

応募資格は団体でも個人事業主でもOK。個人は開業届を出していなくても、実質的にフリーランスとして活動していることがわかればよい。たとえば芸能事務所系ではよくある、歩合制給与の形で所得を得ていて年末調整されているから開業届をだしていないパターンでも、実態としてフリーランスなら申請が認められることがある。

補助の対象は、機材や消耗品、交通費や外注費など幅広い。項目によってその費用の3分の2または4分の3が補助される。そして重要なのは「購入する前からでも申請できる」ということだ。むしろ、購入前に申請して、申請が認められてから購入することが推奨されていると解釈できる記述さえある。

申請はインターネットで完結する。書類を印刷して封筒に詰めて送ったりしなくていい。また、記述は非常に簡潔なので、難しくない。ちょっとしたウェブアンケートのレベルでしかない。

VTuberとして活動している人にとって唯一のネックが「放送やインターネットのみで公開する取組だけに携わっている方は対象外」ということ。「不特定多数に公開することによってチケット収入等をあげることを前提」とされているからだ。

ただ、これも劇団公演のように大々的なものでなくても、店舗イベントやPANORAでも主催しているリアル会場版の「おしゃべりフェス」のようなイベントでも含まれるようだ。2017年以降に2回以上、「不特定多数に公開することによってチケット収入等をあげる」イベントに出演した実績があればよい。2回なら「そういえばあのイベントに出たことあった!」というVTuberも多いのでは?


申請者が語る「そこんとこどうなの?」話

概要がわかったところで気になるのは、実際に申請した人の体験談だろう。気になるところを本補助金に申し込んで対象となったVTuber・わたあめ子さんにお話を聞いた。

──申請案内を読むと、申し込みの区分が4つあります。個人対象で上限20万円、上限150万円、団体で上限150万円、上限1500万円。わたあめ子さんはどれで申請しましたか?

わたあめ子 私は上限20万円の活動継続A-①です。

──具体的にはどんなことを書いたのでしょうか。

わたあめ子 文字制限が厳しかったので、具体的な品名を書くというよりは「VRを用いての表現充実のため周辺機器」「技能向上のためのソフト及び資料」のような表現になりました。

文化庁のWebサイトにある【コンピューターその他の電子機器を利用した芸術】記入例のPDFより。青い部分が記入例。120文字のため、書く内容はこの程度になってしまう

──案内を見ていくと、個人の場合は統括団体なるところから確認番号を発行してもらう……といった記述があります。多くの人はこの文言で心が折れそうですが、わたあめ子さんはどうされましたか?

わたあめ子 一見、統括団体の確認番号を得ないと申請できないかのように見えるんですが、別になくても申請できるんです。Q&Aのところにも書かれていました。

Q&AのPDF2ページ目より

──確かに、よくよく案内を見ると、別に必須というわけではないという。

わたあめ子 そうなんです。でも、あめ子の観測範囲では心折れがちなのがこのポイントっていうのは間違いなくて、調べたときに去年の確定申告の書類を出すか、統括団体の確認番号を貰いに行くか、みたいな2択を迫られる印象を受けるみたいです。確認番号があると確定申告の書類を出さなくてもいいですよってことなんですよね。 例えば、今年開業届出したから去年の確定申告の書類はない人とか。

──実際、わたあめ子さんは統括団体の確認番号を出してないという?

わたあめ子 そうですね。

──募集案内には「※放送やインターネットのみで公開する取組だけに携わっている方は対象外」という記述があります。VTuberの場合はインターネットでの活動がメインになってしまいますが、この部分はどうしましたか?

わたあめ子 インターネットのみで活動していると確かにダメなんですが、あめ子はリアルイベントに出演したことがありました。そのイベントが、まさにチケット代をいただいて話せる内容だったので、それを活動実績としたら通った感じです。

──どれくらいの活動実績があれば認められるのでしょうか。

わたあめ子 (2017年以降に)2回以上っていうのが案内に書かれているんです。

募集案内ⅠのPDF 9ページ目より

──本当だ! 具体的にはどんなイベントに出られていたのでしょうか。

わたあめ子 「Vtuberラウンジ」っていうイベントと、「virtual系ガジェット試遊会」というイベントがチケット代が発生するイベントでした。グッズとかも置いてもらって実際に収入になっていたので、活動実績として提出してみました。

──募集案内を見ると、不特定多数にチケットを販売するという条件ならイベントが大規模か小規模かは問われないようですね。意外と機会はあったから「そういえば自分も出ていた!」という人は結構いそうです。

わたあめ子 そうなんですよ。

──芸術のジャンルを選ぶところがありますが、「コンピューターその他電子機器を利用した芸術」ですか?

わたあめ子 はい、そうです。

──補助の対象となる取り組みというのも、①~③がありますね。ここはどのように書かれたのでしょうか。

わたあめ子 ②と③の合わせ技みたいな感じですね。 ほとんどは②に該当する消耗品費だったのですが、確定申告をe-Taxでやるためのカードリーダーを③にしました。

募集案内ⅠのPDF 11ページ目より

──ああそうか! そういうのも入れられるんですね。 

わたあめ子 確定申告もコロナの影響でどんどん延長したりしていたので。

──補助率が対象によって3分の2だったり4分の3だったりと分かれていますが、わたあめ子さんの場合はどうでしたか?

わたあめ子 ICT活用の取組というのが4分の3が適用されるんですが、私の場合それは先ほどのカードリーダーだけなので、ほとんどは3分の2でした(筆者注:ICTとは情報コミュニケーション技術のことで、用は情報技術のこと。行政の文書ではITではなくICTと描かれることが多い)。

──結構何でも通りそうなイメージさえ湧いてきました(笑)。PCやモーションキャプチャー、ビデオキャプチャー、マイクなど、VTuber向けの機材は高額なことも多いですし、こうした補助があるなら活動を充実させられそうです。 

わたあめ子 私の場合は個人事業主として持続化給付金も申請していたのですが、その給付金で買った機材やソフトも申請できました。ちなみに募集案内にもあるんですが、(個人事業主として)持続化給付金を受けていると確定申告の資料を送る手間も省けるんです。給付金もらいましたというハガキをパシャッと写真に撮って送ればそれでよしなんです。

募集案内ⅠのPDF 19ページ目より

──申請は全部オンラインで完結するってことなんですね。 

わたあめ子 そうです。資料も全部、郵送ではなくて写真を送信するだけですね。 

──募集案内の14~17ページを見ると、結構いろいろなものが補助対象の物品になりますね。感染症の対策って、消毒用のアルコールスプレーとかも入れられる。これはみんな買っているから、それも補助対象にできる。

わたあめ子 入ります、入ります。それで消毒用アルコールを買いました。

──対象の3分の2が補助されるわけだから、対象になる物があるならどんどん入れておいて上限の20万円が補助されるように調整できそうですね。ソフトウェアも対象になるんでしょうか?

わたあめ子 あめ子はSubstance Painterを買いましたね。 

──逆に、書いてみたけど通らなかったものってありますか? 

わたあめ子 何も弾かれなかったです。書いたものは全部通りました。文字数制限もあるので、あまり詳細に書けないものもあったのですが。

──対象外のものもありますね。インターネットの利用料金、通信費とか。

わたあめ子 そうですね。私が申請したのはほとんどは消耗品費です。 

──9万9999円までの物品が消耗品費になるって書いてありますね。

わたあめ子 そうです、そこです。

──申請には事業計画書が必要っぽいことがかいてありますが、ここはどうしましたか?

わたあめ子 私は出していないです。このA-①の申請では必須ではないんですよ。

──本当だ。よく見たら18ページに事業計画書は求められた場合のみって書いてありますね。 そう考えると、思っていたより手軽に申請できそうです。提出後は、どんな感じに進むのでしょうか。

わたあめ子 段階ごとに細かくメールが来るので、意外に不安にはなりにくいと思います。申請完了のメールも来ますし、修正部分があれば「これが記載されている資料を添付してください」といった感じのメールが来ました。

──親切ですね! お役所の申請って、ダメだったらもうそこで終了みたいな印象がありました。

わたあめ子 私の場合は公演の日付とチケット価格がわかるものをと言われました。日付とチケット代が一枚にまとまっているイベントの場合はその1枚の画像で。1枚にまとまっていない場合は、領収書とチラシを組み合わせてって感じでOKでした。

──結構柔軟に受け付けてくれるんですね。修正資料を出して、その後、通ったよという連絡が来ると言うことでしょうか。

わたあめ子 そうですね。

──補助金はどれくらいで振り込まれるのでしょうか。

わたあめ子 申請の中に、後で全額を下さいというパターンと、先に半額を下さいというパターンを選ぶところがあるんです。あめ子の場合は先に半額くださいのパターンだったんですけど、通ったよメールが来たのが9月25日で、10月の頭とかにその半額の振り込みがあったと思います。早いですよね。

──残りのもう半額が来たのはいつですか。

わたあめ子 まだ来ていませんが、実績報告をしてだいじょうぶだったというお知らせはきています。(筆者註:11月27日に残額が振り込まれたとのことです)

──「補助事業が完了した日から三十日以内に実績報告をを行なっていただきます」と書いてありますが、どんな実績を報告したのでしょうか。

わたあめ子 実際このくらいのお金がかかりましたという感じものですね。

──活動の実績ではなくて、かかったお金の実際ということですね。案内によると領収書の提出も必要ないという?

わたあめ子 ただ、領収書はちゃんともらった上で、5年間の保存義務があります。

──実際に申請が通ってから報告するということは、機材や物品を購入する前から購入予定の物品で申請できるし、通れば半額補助が来るということですか。

わたあめ子 実際に文化庁のコールセンターに問い合わせて「既に支払っているもの以外は、交付決定後に購入する方が安全です」という回答をもらった人の記事があります。

──国もそれだけ焦ってるということでしょうね。芸術家を支援していかないとまずい状況だと。

わたあめ子 私が申請に通ったと言ったら、VTuberは文化芸術なんだと喜んでいた人が結構いました。

──他に注意点などありますか?

わたあめ子 ウェブのフォームには60分以内に入力するという時間制限があるので事前に下書きしておくことと、必要書類の画像は2MB以下のZipで圧縮しておくことでしょうか。Zipにまとめておかないとフォームの数が足りなくて戸惑うかもしれません。

添付書類をアップロードするフォームより

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