圧倒的なお手軽さっ……! 5万円で使えるゆにクリエイトの個人VTuber向けスタジオ体験レポート

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ゆにクリエイトは、10月18日にデビュー1.5周年を迎えた赤月ゆにちゃんが会長を務める企業だ

バーチャルYouTube(VTuber)を運営する上で欠かせないのがモーションキャプチャー(モーキャプ)だ。2D・3Dのモデルを問わず、動画や生放送の内容に合わせて生々しくリアクションしてくれるのが、アニメやゲームなどにはないVTuberならではの魅力といえる。

そんなモーキャプの方式はいくつかあるが、より「ぬるぬる」動いて見る側のインパクトの大きい作品をつくろうとすると、高価な機器を用意したスタジオを利用するのが一番だ。最近では10月末ににじさんじが高価なモーキャプシステム「VICON」を導入したことが日本のTwitterトレンドに登場するほど話題になったことが記憶に新しい。

一方で、モーキャプスタジオはゲームや映画などの収録を想定しているため、利用料は数十万、数百万レベルと基本的に高額だ。VTuber向けをうたって外部に開放しているスタジオはそう多くなく、PANORAでも過去に取材した東京・秋葉原エリアにある「BitStar Akihabara Lab」や、Wright Flyer Live Entertainmentの「REALITY Studio」などが代表的だ。ただ、基本当初は法人向けで、個人でも使えるスタジオを探すとなるとさらにハードルが上がってしまう。

と、そんな状況において、美少女吸血鬼YouTuber「赤月ゆに」ちゃんが会長を務める「ゆにクリエイト」が、現在、法人向けに提供している東京・新御徒町にあるスタジオを、個人にも貸し出し始めるという情報を得た。

聞けば、光学式のOptiTrackを採用しつつ、個人なら1人で5万円、2人で8万円、4人なら10万円という破格の料金だ(法人は別料金)。利用時間は、動画の場合4時間(準備1時間、収録3時間)、生放送の場合3時間(準備1時間、収録2時間)とのこと。

「お友達料金」とも言える圧倒的な安さはなぜなのか。赤月ゆに会長にお話を聞くと、個人VTuberシーンをもっと盛り上げたいという想いが背景にあるとのこと。体験レポートも含めて、その全貌をお届けしよう。

15分で撮影に入れる! 魔王マグロナちゃんの収録実績も

まずは体験レポートから。OptiTrackは、体などにつけたトラッカーを赤外線LEDカメラで撮影してCGに反映するという光学式のモーキャプとなる。トラッカーの点数を増やして動きの滑らかさをアップできたり、空間における絶対位置を取れるので時間が経つにつれてずれていくという現象も起こりにくい。性能が高い分、カメラ1つで数十万円と個人では導入がかなり難しいソリューションだ。

ゆにクリエイトではそんなカメラを20台用意し、幅5×奥行き5.5×高さ3m(可動範囲は4×4m)のモーキャプ空間をぐるりと囲んでいる。演者は、スーツを着た上で体に37点のトラッカーをつけ、さらに指の細かい動きを取るために「Hi5 GLOVE」を手に、無線のヘッドセットを頭と腰に装着することになる。収録可能な人数は最大3人で、モーション・音声を同時に記録できるので撮影時間を短縮できるとのこと。

実際に試してみて、一番いいなと感じたのは、着脱が非常に早いという点だ。モーキャプスーツは着ている服の上から装着可能で、キャリブレーションも含めてものの15分ほどで撮影に入れた。脱ぐのも5分ぐらいなので、「魂」の方の拘束時間を極力減らせるのが魅力だろう。モーキャプの精度も非常に高く、ダンスなどの激しい動きにも耐えてくれていた。 既存のVTuberさんでは「バ美肉」ジャンルを代表する魔王マグロナちゃんが収録に使っているとのことだ。

モーキャプスーツを上下装着したところ。いきなりおじさんの絵面で申し訳ない。
体の随所にマーカーをつけていく。
無線ヘッドセットとグローブを装着して……。
あとはTポーズでキャリブレーションして、Unityにデータを流し込めばすぐに撮影可能だ。はやい。
実際、激しく体を動かしたときにもきちんと動きが付いてきてくれた。
突然モーキャプで美少女になると何していいかわからないですね。とりあえずボディービルダーのようなポーズをとってみました。
「切れてる!切れてるよー!」(切れてない)

「3Dなのに上半身真正面しか動けないのはもったいない」

では、なぜ高性能なモーキャプスタジオを個人向けに安価に提供しようとしているのか? ゆに会長に直接お話を伺った。

──なぜ個人向けを始めようと?

ゆに会長 少なくとも、VTuberの世界では法人だけを相手に絞る必要もないかな、と思って。個人でVTuberを始めたのが規模が大きくなって法人になることもあるだろうし、多少規模が大きくなっても個人のままのこともあるだろうし。売れっ子の同人作家が法人化してるかどうかくらいの違いしかないかな、と。あと、正直に言うと、個人でもしっかりしてる個人はしっかりしてるし、法人でもあぶない法人はあぶない。

──確かに。利用料があり得ないくらい安いのはなぜ?

ゆに会長 利用料に線を引いて、お金があるところに技術を寡占しても仕方ないかと。

──技術を寡占する?

ゆに会長 「IKINEMA Orion」(HTC VIVEとVIVE Trackerを使うモーションキャプチャー機器)亡き今となっては、個人でモーションキャプチャを利用しようとすると最低でも数百万円のお金がない限りHTC ViveかPerception Neuronくらいしか選択肢がないわけで、所持金の多寡がすなわちモーションの滑らかさになってしまう。安いモーションキャプチャーだと全身を満足に撮れないし、空間における絶対位置も取得できないかズレやすい。ジャンプしようとしても、こう……ネズミ捕りに捕まったみたいになるわけで。

せっかく3Dなのに、結局上半身真正面くらいでしか動けずに、Live2Dと変わらない見た目になっちゃうのはもったいないよね。しかも、それが金銭の有無の問題となれば、なおさら馬鹿らしいよね。

……という意。

──なるほど。実際、過去に利用した方々の声は?

ゆに会長 最近のレビュー:圧倒的に好評
     全てのレビュー:圧倒的に好評

──ちょw おそらくVTuber業界の底上げ意図にあると思われますが、ゆに会長としてはVTuber業界が将来的にどうなっていってほしいと願っている?

ゆに会長 正直に言うと、VTuberって言葉が無くなる方がいいと思う。よくも悪くもV(バーチャル)って言葉の意味が日に日に曖昧になって、二人でVTuberの話をしてるつもりが、それぞれまるで別の話題だった、みたいなこともよくあるし。

すっかり廃れちゃった「生主」とか「歌い手」「ゲーム実況者」みたいな言葉もそうだけど、登場当初は物珍しかった肩書も、しがみつき続けると、その肩書を自称することそのものがダサくなるわ、土地が痩せてプレイヤーがいなくなるわでかなしいことになるから……。「サブカル」とか「ロリコン」を自称してたのがいつしかダサいことになって廃れていったように、時代は繰り返す。

ともかく、いまのVTuberって言葉はよく言えば何にでも使いやすい、悪く言えば解像度の低い言葉だから、将来的にVTuber業界がどうなっていってほしい、とはなかなか……。ただ、各々がやりたいことを見つけて、よりユニークな活動と名乗りをできるようになってくれたらうれしい……みたいな。

……というか、そういう新しい呼び方や概念を提唱するのがメディアやライターの仕事なんじゃないのかな、PANORAさん。



というわけで、「ぬるぬる」の動画をまとめて撮影したかったり、気合の入ったコラボ生配信を実施したいと検討している3D VTuberの方々はぜひ利用してみてはいかがだろう? 問い合わせは、公式サイトからコンタクトを取るか、メール(studio@unicreate.jp)や電話(050-3592-8214 )でも受け付けているとのこと。

(TEXT & Photo by Minoru Hirota

 
 
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